極甘社長にほだされても二度と秘書はやりたくない
「結婚式、坂井さんの席も追加しないとね。藤沢社長と一緒に、来てくれるんでしょう?」
「……え?」
優しい二宮さんの声にハッとした。
――藤沢さんと一緒に私が二宮さんの結婚式に行く?
顔を上げるとそこには笑顔で純白のウェディングドレスに身を包んだ二宮さんと――
「一緒に写ってるのって……」
「開発部の部長だよ。竹野。前に話したことあったよね。学生の時に起業した話。その時のメンバーが竹野と二宮なんだ」
二宮さんの隣には白いタキシード姿に身を包んだ、体格の良い男性がいた。確か社内ではあまり見かけた事がなかったなと記憶を巡らせる。
「竹野は今大型の案件で客先に常駐してもらっててね。うちにはエースの宮川もいるし」
そう説明されるとなるほどと納得する。そういえばあまり他の部の部長にもまだ挨拶をしていなかったなと思い出す。いつも藤沢さんと一緒に行動していたから、当たり前と言えば当たり前なのかもしれないけど。
「あ、じゃあ挨拶って……」
「そう。昔なじみだし、何より社長挨拶はちゃんとしないとね」
「あたり前です。ちゃんと一社会人として仕事してたってアピールしてください」
「そ、そういうことですか……!」
二人の会話が社長と社員としての話だったと思うと何らおかしくはない。というより、藤沢さんと二宮さんが結婚すると勘違いしていたのが恥ずかしくなる。
(穴があったら入りたい……!)
顔が熱を持っていくのが分かる。この勘違いは二宮さんに対しても失礼だ。
(じゃあ、藤沢さんが私のことを好きと言ってくれていたのは……)
今までの藤沢さんの行動を思い出す。好きと伝えてくれたこと、優しく抱いてくれたこと、前の社長に対して牽制したり、嫉妬したりしてくれたこと。全部、藤沢さんは真っ直ぐに思いを伝えてくれていた。
「ふふ、それじゃあ、話がまとまったらまた連絡ください」
スマホをしまうと二宮さんは笑いながら社長室を出て行った。さっきとは違う気まずい沈黙が流れる。私はただぎゅっと拳を握って下を向くしかない。
「俺って、そんなだらしない男だと思われてた……?」
「そ、そんなことないです……でも、てっきり……」
社長と恋愛関係になりたくないと思っていたこと。
秘書にはなりたくないと思っていたこと。
自分の中でブレーキをかけていたから、藤沢さんの思いを素直に受け取ることができなかった。
「正直な話をすると、昔から3人でやってきたからさ。あの二人が結婚するってなって、俺だけ一人弾かれちゃったみたいで寂しかったっていうのはあるんだ」
その寂しそうな声色に顔を上げると藤沢さんは困ったように微笑んでいた。昔を懐かしむような少しだけ遠い目をする。
「二人を祝福する気持ちはもちろんあるよ。でも、そんな時に君に出会って……勘違いから始まったとしても、君との時間を楽しんでることに気付いたんだ」
「藤沢、さん……」
仕事が成功していても、お金があっても手に入らない幸せがある。そんなことを言われているような気がした。
「だから、もう一度ちゃんと言うね。俺は坂井さんが好き。秘書になって欲しいし、結婚前提で俺と付き合って欲しい。もし君が社長という肩書きが嫌なら、そんなものいらない。君と一緒にいられない方が、嫌だから」
そっと藤沢さんの手が私の手に触れる。ぎゅっと拳を作っていた手か力が抜けていく。
「もう怖がらなくていいよ。俺は絶対に君を裏切らない。俺を……信じて?」
顔をあげると藤沢さんの真っ直ぐな眼差しが私を射貫く。
もう自分の気持ちに蓋をしなくていい。何も遮るものはない。ただ目の前の人を信じればいいんだと心が解放されていくような感覚になる。
「はい……。私も、藤沢さんのことが好きです。よろしく、お願いします」
「うん、こちらこそ改めてよろしくね」
ぎゅっと手を握られる。優しく微笑んでくれた藤沢さんを見てふっと力がぬける。
もう枯れてしまったと思った涙が一粒、頬を伝った。
「……え?」
優しい二宮さんの声にハッとした。
――藤沢さんと一緒に私が二宮さんの結婚式に行く?
顔を上げるとそこには笑顔で純白のウェディングドレスに身を包んだ二宮さんと――
「一緒に写ってるのって……」
「開発部の部長だよ。竹野。前に話したことあったよね。学生の時に起業した話。その時のメンバーが竹野と二宮なんだ」
二宮さんの隣には白いタキシード姿に身を包んだ、体格の良い男性がいた。確か社内ではあまり見かけた事がなかったなと記憶を巡らせる。
「竹野は今大型の案件で客先に常駐してもらっててね。うちにはエースの宮川もいるし」
そう説明されるとなるほどと納得する。そういえばあまり他の部の部長にもまだ挨拶をしていなかったなと思い出す。いつも藤沢さんと一緒に行動していたから、当たり前と言えば当たり前なのかもしれないけど。
「あ、じゃあ挨拶って……」
「そう。昔なじみだし、何より社長挨拶はちゃんとしないとね」
「あたり前です。ちゃんと一社会人として仕事してたってアピールしてください」
「そ、そういうことですか……!」
二人の会話が社長と社員としての話だったと思うと何らおかしくはない。というより、藤沢さんと二宮さんが結婚すると勘違いしていたのが恥ずかしくなる。
(穴があったら入りたい……!)
顔が熱を持っていくのが分かる。この勘違いは二宮さんに対しても失礼だ。
(じゃあ、藤沢さんが私のことを好きと言ってくれていたのは……)
今までの藤沢さんの行動を思い出す。好きと伝えてくれたこと、優しく抱いてくれたこと、前の社長に対して牽制したり、嫉妬したりしてくれたこと。全部、藤沢さんは真っ直ぐに思いを伝えてくれていた。
「ふふ、それじゃあ、話がまとまったらまた連絡ください」
スマホをしまうと二宮さんは笑いながら社長室を出て行った。さっきとは違う気まずい沈黙が流れる。私はただぎゅっと拳を握って下を向くしかない。
「俺って、そんなだらしない男だと思われてた……?」
「そ、そんなことないです……でも、てっきり……」
社長と恋愛関係になりたくないと思っていたこと。
秘書にはなりたくないと思っていたこと。
自分の中でブレーキをかけていたから、藤沢さんの思いを素直に受け取ることができなかった。
「正直な話をすると、昔から3人でやってきたからさ。あの二人が結婚するってなって、俺だけ一人弾かれちゃったみたいで寂しかったっていうのはあるんだ」
その寂しそうな声色に顔を上げると藤沢さんは困ったように微笑んでいた。昔を懐かしむような少しだけ遠い目をする。
「二人を祝福する気持ちはもちろんあるよ。でも、そんな時に君に出会って……勘違いから始まったとしても、君との時間を楽しんでることに気付いたんだ」
「藤沢、さん……」
仕事が成功していても、お金があっても手に入らない幸せがある。そんなことを言われているような気がした。
「だから、もう一度ちゃんと言うね。俺は坂井さんが好き。秘書になって欲しいし、結婚前提で俺と付き合って欲しい。もし君が社長という肩書きが嫌なら、そんなものいらない。君と一緒にいられない方が、嫌だから」
そっと藤沢さんの手が私の手に触れる。ぎゅっと拳を作っていた手か力が抜けていく。
「もう怖がらなくていいよ。俺は絶対に君を裏切らない。俺を……信じて?」
顔をあげると藤沢さんの真っ直ぐな眼差しが私を射貫く。
もう自分の気持ちに蓋をしなくていい。何も遮るものはない。ただ目の前の人を信じればいいんだと心が解放されていくような感覚になる。
「はい……。私も、藤沢さんのことが好きです。よろしく、お願いします」
「うん、こちらこそ改めてよろしくね」
ぎゅっと手を握られる。優しく微笑んでくれた藤沢さんを見てふっと力がぬける。
もう枯れてしまったと思った涙が一粒、頬を伝った。