愛なんて要らないから
「皓ちゃんって、実はすごく面倒くさがり屋だし、すぐに諦めちゃう性格なんです」
「……え?」
「あなたに強引に迫っていくのは、それだけあなたに対して特別な感情があるということです。あの人は人を傷つけるような嘘は絶対についたりしない人。そこは安心してくださいね」
「嘘はつかない……か」
恋人にずっと嘘をつかれていた私にとって、知り合ったばかりの皓太さんが嘘をつかない人だと言われても、その言葉を信じるのは難しい。
でも、陽さんが皓太さんのことで嘘をつく必要なんてないのだし、二人には深い信頼関係があるように見える。
そんな陽さんが言うのなら、皓太さんは本当にそういう人なのかもしれないと思えてきた。
「もし、あなたに何か抱えていることがあるなら、皓ちゃんを頼ってあげてください。それが皓ちゃんを救うことにもなるんです」
「……それは、どういう、」
チリン、っとお店入り口のベルが鳴り、新しいお客さんが店内に入ってきた。
陽さんは私に軽く頭を下げて微笑むと、そのお客さんに声をかけた。
あえて私の顔が見えないように、お客さんの席を配置してくれた陽さんの心遣いには、頭が上がらない。
皓太さんがどんな人なのか知りたいという気持ちが少し芽生えたけれど、まだ深く関わることにブレーキをかける自分がいる。
そんなことを思いながら、ゆっくり味わうようにカップの中のドリンクを飲んで待っていると、再び誰かの入店を知らせるベルが鳴り、皓太さんがお店に戻ってきた。