愛なんて要らないから
「美羽ちゃん、お待たせ。行こうか」
皓太さんにそう言われて、私は残っていたドリンクを一気に飲み干すと椅子から立ち上がった。
相変わらず皓太さんは私に迷う隙を与えてはくれない。
私が支度を整えているうちに皓太さんがドリンク代を支払ってくれて、そのまま手を引かれてバーの外に出た。
店の前に停められている黒い車の助手席のドアを開けてくれた皓太さん。
ドアの前で足を止めると、皓太さんは、
「大丈夫。流石に今夜は襲わないから」
耳元でそう囁いて、私の腰に手を添えて微笑んだ。
皓太さんは絶対に私を逃してはくれないと諦めて、車に乗るとすぐに車は走り出した。
無言の車内が少しだけ気まずくて、陽さんが持たせてくれたお土産のバタピーが入った紙袋を握りしめる。
「美味しかったでしょ?陽ちゃんのバタピー」
「たしかに、塩加減が絶妙でした」
「だよね。ねえ、バタピーちょうだい」
バタピーの入った紙袋の口を開けて、皓太さんの手が届く位置に持っていく。
「手が離せないから、食べさせてよ」
クスクスと、楽しそうに笑う皓太さん。
その横顔を見ていると、先程バーで泣きそうな顔をしたように見えたのは、見間違いだったのかもしれないなんて思えてしまうけど。
さっき陽さんから聞いた話が意味深で、そういう訳でもないのかもしれないとも思うし。
やっぱり、皓太さんってよくわからない人。