愛なんて要らないから
萌ちゃんとの電話を思い出すと、胸が締め付けられる感覚になって苦しい。
あの時の記憶を頭から追い払うように、車の外の夜景に意識を集中させていると、右手が皓太さんの温かい手に包まれた。
優しく指を絡められると、皓太さんと初めて過ごした夜も、こんな風に優しく触れてくれたことを思い出して、私の胸はチクリ、さっきと違う痛みがした。
「美羽ちゃんの彼氏の気持ちは俺にはよく分からないけど、男って好きな気持ちがなくても抱けるし、好きな気持ちがあっても抱けないことあるから」
「……じゃあ、皓太さんはどういうつもりで私のことを抱いたんですか?」
「それは美羽ちゃんを俺のものにするため?」
「なんで疑問形なんですか……」
私の返しに皓太さんはクスクスと笑うと、やんわりと繋いでいた手に力がこもった。
「初めてだから、わかんないんだよ」
「……え?」
「衝動的に欲しいって思ったのも、本気で手に入れるつもりで抱いたのも、初めてだったからわかんない。でも、」
そこで一旦、言葉を区切った皓太さんの方を向くと、優しく微笑む彼と目が合った。
「美羽ちゃんに気持ちがあって抱いたのは、本当」
" あの人は、嘘はつかない "
もし、陽さんの言葉が嘘じゃないのなら、皓太さんは本当に私のことを……。