愛なんて要らないから
妹さんは、「兄がお世話になっています」と、丁寧に挨拶をして、そのまま悠が入院している病室に案内してもらうことになった。
まさか悠の身内に会えるなんて……。
思っていなかった展開、そしてもうすぐ悠に会えることに緊張をして少し手が震えている。
「そういえば、どうして私の名前を?」
「お兄ちゃん、結婚を考えている彼女がいると言っていたのに、その方がなかなか病院に来ないので、事故のことを知らないのかもしれないと思って、連絡する手がかりを探すために兄の部屋に入ったんです」
私たちより少し前を歩いている妹さんが、話をするためか、私たちと歩幅を合わせて隣に並んで歩いてくれた。
「部屋で、恐らくあなたに渡すつもりだったアルバムみたいなものを見つけて、美羽さんの顔と名前までは把握が出来たんです。こちらから連絡しようと思ったのですが、何故かお兄ちゃんのスマホが見当たらなくて……」
「そうだったんですね。あの、悠の容態は?」
私がそう尋ねると、妹さんはピタリとその場で歩みを止めて俯いた。
「お兄ちゃんは、もう目を覚ますことはないです」
「え……」
「脳死判定が出ています。もう、いつ心臓が止まるかわからない状態です」
その言葉に、頭が真っ白になった。