愛なんて要らないから
「あ……美羽、さん」
悠の妹さんは、私の顔を見て少し顔を引き攣らせた。
でも、それは当たり前の反応。だって私は、彼女の前でいきなり自分のお腹に包丁を突き刺した。
そんな場面を目の前で見せられて、普通でいられるわけがないのだから。
私から目を逸らし、うつむく妹さんの姿を見て、自分の行いで悠の妹さんにも怖い思いをさせてしまったことを痛感して、胸がキュッと痛んだ。
一刻も早くここを立ち去ろう。そう思って車椅子を方向転換させようとした時、皓太さんが私の方に歩いてきて車椅子を押してくれた。
「皓太さん、私は大丈夫ですから。彼女についていてあげてください」
そう告げても、皓太さんは私の車椅子から手を離そうとしない。
何も言わないまま、車椅子を押してこの場から離れようとする皓太さんの行動は、もしかしたら妹さんから私を遠ざけるためなのかもしれない。
そう思って、大人しく私は車椅子を押してもらい、少し離れたところでブレーキをかけた。
「ここで大丈夫なので。彼女の元に行ってください」
「妹ちゃんとは葬儀のことで連絡を取り合っていただけ。あと、美羽ちゃんの容態を気にしていたからその報告をしていたくらい」
「別に、そんな弁解いらないです」
別に皓太さんが他の女の人に優しくしていても私には全く関係のない話。
だから、それが嘘だとしても本当だとしても、そんなのはどちらでもいい……。