愛なんて要らないから


「美羽さん!!」

 後ろから名前を呼ばれて振り向くと、悠の妹さんがいた。

 私は車椅子をくるりと動かして妹さんと向き合うと、視線が合うも、お互いに緊張してしまって次の言葉がなかなか出てこない。


「あの……私がお兄ちゃんのところに美羽さんを連れて行かなければ、美羽さんはそんな怪我を負うこともなかったのにって、ずっと謝りたくて。巻き込んでしまって本当にごめんなさい」

「あれは私が勝手に……というか私こそ、あんなことして怖がらせてしまったよね。ごめんなさい」

 悠の妹さんは、ふるふると首を横に振った。


「美羽さんが生きててよかった。お兄ちゃんだって、そう思っています。だから……幸せになってください」

 ふわりと笑い、私の後ろにいる皓太さんに少しだけ視線を向けた妹さん。

「……っ、」

「お兄ちゃんも、そう思っているはず。誰よりも美羽さんの幸せを願っているはずだから」



『美羽の笑ってる顔をみてると、俺も幸せ』

 妹さんの泣きそうに笑う顔を見て、付き合って最初のデートで悠が少し涙ぐみながら言っていた言葉を思い出す。

 心臓が、ぎゅっと強く掴まれたかのように痛くて、鼻の奥がツンっとしたかと思ったら、目から涙が溢れた。


「お兄ちゃん、大学の後半は萌ちゃんとのことがあって塞ぎ込んでいたんです。でも社会人になってからはとても生き生きとしていて。美羽さんの存在がお兄ちゃんを救ったんだと思います。お兄ちゃんを幸せにしてくれて、ありがとうございました」

 声を震わせて、深く、深く頭を下げる妹さんに、私は車椅子から立ち上がると彼女をそっと抱きしめた。





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