愛なんて要らないから


「……ふっ……はる……」

 止まらない嗚咽。でも堪らず口から溢れる悠の名前。

 いくら名前を呼んだって、もう悠が返事をしてくれることはないのに、それでも心が悠を求めて名前を呼ばずにはいられなかった。


「やっぱり、おいていかないで……」

 私も一緒に連れていって。

 そして、悠と約束の続きを叶えたいよ。


 死後の世界のことなんて分からないけれど、悠と一緒ならなんでもいい。

 二人で笑いあって、悠と同じ時間を過ごしていたい……。


 胸はこんなに痛くて苦しくて、自分で腹部を刺した時の痛みなんかよりも、ずっとずっと痛くて苦しい。

 この苦しみを消せるのは、悠しかいない。

 悠しか、いないのに……。


「あとどれくらい悠のいない日々を過ごしたら、私ははるの元にいける?」

 そんな問いかけをすると、少し強めの海風が吹いてきて思わずぎゅっと目を瞑る。


 風が止み、ゆっくりと目を開けると、目の前に黒いアゲハ蝶がふわりと飛んでいた。

 無意識にそのアゲハ蝶に手を伸ばすと、蝶は私の指先に止まり、その瞬間ドキリと胸が高鳴った。




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