せっかく凡庸な彼女が自ら身を引いてくれたのに、天才魔術士はそれを許すつもりがないようです
「家にはロザリアさんが……」
「大丈夫」
「ちっとも大丈夫なんかじゃないわ!」
「ロザリアなら警察に保護されたよ」
「警察⁉︎」
訳が分からない。
どうしたらそんな事態になるのか。
「ロザリアが家を飛び出した後、どこに行ったのか分からなくて心配した知事が、知事の権限を使って警察に捜索願いを出したんだ。しかもヨルデンだけでなく、ロザリアの行く可能性のある州の知事にまで協力を依頼してね」
「えっ、何それ……規模が違うわ……」
「だからこそ、厳重に守られながらヨルデンまで送り届けられると思うよ」
全身の力が抜ける。
「おおっと」
ハンスが咄嗟に腕を伸ばしてジェシカを支えた。
「大丈夫? 馬車の乗り場まで歩けそうかい?」
そのまま手を引いてゆっくりと歩き出す。
ジェシカの両親はセシルを挟み、手を差し出す。
「セシルくんは、僕らと手を繋いでくれるかな?」
「うん」
セシルとジェシカの両親もまた、ハンスとジェシカの後ろを歩き始めた。
「何だか夢でも見ているみたいだわ。娘と再会できただけじゃなくて、息子と孫にまで出会えて……」
「夢であってたまるものか。今までの分まで一気に取り戻しただけさ」
「そうね、その通りだわ」
〜 エピローグ 〜
──ほどなくして、ジェシカとハンスは結婚した。
“あのハンス先生の息子”になったセシルは、二度と学校でイジメに遭うことはなかった。
さらにはセシル自身も、ノーステリア州立魔法学校創立以来の天才として、高く評価されることになった。
ジェシカも無事にカレッジに入学を果たし、教員免許を取得。
子どもの頃からの夢を果たし、教職に就いた。
ハンスは職場では若手の上級研究者として将来を嘱望され、多忙な日々を送る一方、家族を愛し、家族で過ごす時間を何よりも大切にし続けたのだった。
END
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