せっかく凡庸な彼女が自ら身を引いてくれたのに、天才魔術士はそれを許すつもりがないようです
ジェシカはセシルの手を取って通りを歩く。
まず向かうのは幼児保育所である。
町はすでに動き出していた。
人々は早足にそれぞれの目的地へと向かう。
が、時折、その流れを遮るように大きな荷台を引っ張る者や、新聞スタンドの前で足を止める者が混じる。
ジェシカとセシルは道の際の際を歩いた。
大きな石が落ちていたり長い草が生えていたりと、非常に歩きにくい。
子どものセシルにとってはなおさらなのだが、セシルを朝の雑踏から守るためには仕方がない。
セシルの歩幅に合わせて、ジェシカもゆっくり歩く。
ふたりの歩調はぴたりと合っている。
ジェシカはふと、ジェシカとセシルのふたりだけが世界から切り離されているように感じた。
(ああ、でも、実際に私たちはこんなふうに生きてるじゃない)
世間の隅っこで。
もう3カ月もすれば、セシルは魔法学校に入学する。
ますます成長し、いずれはジェシカの手から少しずつ離れていくだろう。
しかし、少なくともあの日から今日までは、ずっとふたりで生きてきた──