私を言葉で抱く年下作家の溺愛
軽い調子。けれど。

その空間は、妙に落ち着いていた。

生活感がある。

ちゃんと“ここで生きている人”の気配がする。

……少しだけ。ほんの少しだけ、肩の力が抜けた。

「こっちです」

彼に促されて、机の前まで歩く。

モニターの横に、数枚の紙が置かれていた。

「それが?」

「はい。さっき言った“二、三枚”」

無造作に差し出される。

最初の一枚を読んで——

私は、そこで目が止まった。

……なに、これ。

文字が、ただ並んでいるだけじゃない。

感情が、そのまま流れ込んでくる。

胸の奥に、じわりと何かが滲む。

気づけば、次の行を追っていた。

二枚目をめくる。

息をつく間もなく、三枚目へ。

指が、勝手に動いていた。

——空気が、変わる。

さっきまでの静かな部屋じゃない。
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