私を言葉で抱く年下作家の溺愛
けれど。ここで引く理由はない。

私はそのまま靴を脱いで、家の中へ足を踏み入れた。

——あれ?

思わず、視線が室内をなぞる。

想像していたのは、もっと散らかった部屋だった。

脱ぎっぱなしの服、積み上がったゴミ、荒れた生活。

……なのに。床はきちんと片付いていて、空気も澱んでいない。

シンプルな家具に、無駄のない配置。

奥には大きな机とノートパソコン、

その周りには、資料らしき本やメモが整然と並んでいる。

「……意外と、ちゃんとしてるんですね」

ぽつりと漏れた本音。

「何すか、それ」

背後で笑い声がする。

「もっとダメ人間だと思ってました?」

「ええ」

隠す気もなく頷いた。

彼はくすっと笑う。

「まあ、半分は当たってますけど」
< 9 / 150 >

この作品をシェア

pagetop