私を言葉で抱く年下作家の溺愛
その言葉に、一瞬だけ、息が止まる。

でも、すぐに頷いた。

「……うん」

それだけ。それ以上は、何も言わない。

言えない。黙ったまま玄関を出る。

背中に、彼の気配を感じながら。

でも、振り返らない。

ここ最近、こんな夜が、増えていた。

一緒に住んでいるはずなのに。一緒にいない。

それなら——意味なんて、あるの?

そんな考えが、頭をよぎる。

でも、すぐに打ち消す。——違う。

これは必要な時間。彼のために。仕事のために。

そう、自分に言い聞かせる。

翌日。編集部に入ると、いつも通りの空気が流れていた。

「ねえ、見た?」

若い女性社員の声。

「雨宮先生の自宅」

「見た見た!」

楽しそうに続く。
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