私を言葉で抱く年下作家の溺愛
「梨沙、悪い」

玄関の前で、蓮が手を合わせた。

少し困ったような顔。見慣れた表情。

「今夜も無理そうなんだ」

——その一言で。胸の奥が、すっと冷える。

「……三日連続で?」

自分でも驚くくらい、声が硬かった。

「違うテレビ局なんだ」

彼は、言い訳みたいに続ける。

「仕方ないんだよ」

——仕方ない。その言葉が、やけに遠く感じた。

私は何も言えなかった。

でも。もう、限界だった。

「これじゃあ、一緒に住んでる意味、ないじゃない」

やっと、言葉を絞り出す。

その瞬間、空気が止まる。

「梨沙」

名前を呼ばれる。少しだけ低く。

そして——腕を引かれた。

玄関の中へ引き込まれる。

ドアが、閉まる。
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