私を言葉で抱く年下作家の溺愛
空気が張り詰める。田辺は、少しだけ目を細めた。

「ほぉー」

興味を持ったような声。

そして——不意に、耳元に顔を寄せてくる。

「男がいるの、否定しないんだ」

近すぎる距離。昔と同じ、圧。

でも——私はもう、あの頃の私じゃない。

「……ええ、いるわよ」

静かに答える。逃げずに。

そのまま、一歩引く。距離を取り直す。

「だから何ですか?」

まっすぐに見返す。すると田辺は、ふっと笑った。

「いや、どんな男かと思ってね」

軽く肩をすくめる。

視線が、わずかに鋭くなる。

「君がそこまで変わるくらいの相手」

その言葉に、胸が、わずかに揺れた。

その日、蓮は取材の合間に会社へ顔を出した。

「雨宮先生」

私はいつものように、笑顔で近づく。
< 109 / 150 >

この作品をシェア

pagetop