私を言葉で抱く年下作家の溺愛
「それとも、この会社、辞める気?」

——完全に、突きつけられた。

仕事か。恋か。どちらかを選べと。

言葉が、出ない。頭の中が、真っ白になる。

ここまで築いてきたもの。

編集長としての地位。責任。全部。

それと引き換えにするのか。

それとも——彼を、手放すのか。

私は、ただ静かにうつむいた。

この恋は——ただ甘いだけじゃ、終わらない。

そして私は、蓮の家に来ていた。手には、コンビニの袋。

「麻婆豆腐、買って来た」

何でもない風に言う。でも本当は、何でもない夜じゃない。

「今夜は豪華じゃん」

蓮が笑う。その声が、いつも通りで——余計に苦しくなる。

私はキッチンに立ち、豆腐を切り始めた。

手元を見つめながら、包丁の音だけが、静かに響く。

「……うん」
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