私を言葉で抱く年下作家の溺愛
優しく。でも、逃がさない声で。

答えられない。答えなんて、分かっているのに。

私が言えないだけ。

「編集長。雨宮蓮は手放しちゃいけない人だと思います」

——木原君のその一言。

胸の奥に、深く沈む。私は何も言えなかった。

ただ、引き出しの中にある手紙が——やけに重く、感じられた。

誰もいない、残業中のオフィス。

「雨宮蓮に溺れてたんじゃないのか」

低い声が、背後から落ちた。

振り返る。そこにいたのは——田辺。

「……副社長」

名前を呼ぶと、彼は軽く笑った。

「このまま、別れていいのか?」

まっすぐな問い。

でも、その奥にあるものは、分かっている。

私は、何も答えなかった。
< 126 / 150 >

この作品をシェア

pagetop