私を言葉で抱く年下作家の溺愛
「編集長?」

画面に目を落としたまま、私は言った。

「……ストーリーが曖昧」

静かな声。けれど、自分でも分かるくらいはっきりしていた。

「えっ……」

背後で、間の抜けた声がする。

私はスクロールを止めて、ゆっくりと言葉を続けた。

「恋愛の“核心”がない」

空気が、ぴたりと止まる。

さっきまで、この原稿に飲み込まれていたのに。

今は完全に、“編集者”として見ている。

「輪郭がぼやけているの」

振り返る。彼は、呆然としていた。

さっきまでの余裕も、軽さもない。

ただ、言葉を失っている顔。

「もっと明確にして」

私はまっすぐ言う。

「この物語は、何を描きたいのか」

ほんの一拍、置く。

「誰を、どう愛する話なのか」

彼は何も言わない。

ただ、こちらを見ている。
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