私を言葉で抱く年下作家の溺愛
しばらく歩いて、蓮が、ふっと足を止めた。

そして——目の前の店を指差す。

「ここだよ」

「……えっ!」

思わず、声が裏返った。

そこは、会社の近くでも有名な、高級レストラン。

一度は名前を聞いたことがある。

でも——来る場所じゃないと思っていた。

「ちょっと……」

思わず彼を見る。

「お金入ったからって、大丈夫なの?」

正直な疑問が、そのまま出た。すると蓮は、軽く眉を上げた。

「なんだよ、不満かよ」

少しだけ、意地悪く言う。

「違うわよ」

慌てて否定する。

「不満とかじゃなくて……」

言葉を探していると、彼は、くすっと笑った。

「今夜は特別だって、言っただろ」

その一言で、何も言えなくなる。

そして、そのまま。当然のように、店の中へ入っていく。
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