私を言葉で抱く年下作家の溺愛
「何が?」

「この作品に、足りなかったもの」

心臓が、ひとつ強く鳴る。

彼は、まっすぐ私を見たまま続けた。

「“どんな恋か”じゃなくて」

低く、落ち着いた声。

「“誰との恋か”なんですね」

その言葉に、息が詰まる。

「……それが?」

あくまで冷静に返す。けれど、内心は少しだけ揺れていた。

「だから書けなかったんだ」

彼は、どこか納得したように頷いた。

「相手がいなかったから」

その一言。妙に、引っかかる。

「……どういう意味ですか」

問い返すと、彼は、少しだけ首を傾けて——

「簡単ですよ」

その声はどこか柔らかかった。

「俺が書きたい“恋”って」

一歩、距離を詰めてくる。

さっきと同じ。

自然すぎる距離の詰め方。

「こういう年上の女とするやつなんで」
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