私を言葉で抱く年下作家の溺愛
そして——自分の中の一線を。

彼は、逃げなかった。

ただ、じっと私を見つめている。

「……あんた今、女の顔してるよ」

その言葉に。ほんの一瞬、息が止まる。

けれど、私は、目を逸らさなかった。

「私もそう思うわ」

静かに、返す。

もう、引き返す気はなかった。

彼の視線が、少しだけ深くなる。

さっきまでとは違う。

確かに、何かが変わっている。

「上辺だけの小説は、書きたくないんだ」

ぽつりと、彼が言う。

「ええ」

私はすぐに頷いた。

「だから、本当に恋愛すればいい」

その言葉は、もう逃げ道を残していなかった。

沈黙。でも、それは拒絶じゃない。

ただ——選ぶための、ほんの一瞬。

次の瞬間、彼の手が、私の腕を引いた。

ぐっと距離が縮まる。呼吸が、混ざるほどに。
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