私を言葉で抱く年下作家の溺愛
「まあ、そうだけど」

苦笑いする蓮。

その反応に、少しだけ満足する。

彼の家のキッチンに立つ。

エプロンもないまま、手際よく準備を始める。

冷蔵庫を開けると、予想通り中はスカスカだった。

「ほらね」

振り返って言うと、彼は肩をすくめた。

「一人だと、こんなもんですよ」

「だめよ、それじゃ」

包丁を手に取る。

野菜を切る音が、部屋に静かに響く。

その間も、彼の視線を感じていた。

ずっと、見られている。

でも、嫌じゃない。

むしろ——少しだけ、心地いい。

「……何?」

ちらっと振り返る。

「いや、こういうの、嫌いじゃないって」

彼は小さく笑った。

その一言に、胸がかすかに熱くなる。

「……ただの食事よ」

私はそっけなく返す。

でも、その“ただ”が、少しずつ変わっていることに気づいている。
< 32 / 150 >

この作品をシェア

pagetop