私を言葉で抱く年下作家の溺愛
それでも静まり返ったまま。

……いない?

そう思った瞬間——ドタドタドタッ、と奥から慌ただしい足音が近づいてきた。

次の瞬間、勢いよく玄関のドアが開く。

「あ、東洋出版さん?」

現れた男を見て、私は一瞬、言葉を失った。

無精ひげ。寝癖のついたままの髪。よれたTシャツに、部屋着のようなパンツ。

……これが、“新人賞作家”?

「雨宮蓮先生、ですね」

一応、確認する。

「はい、そうです」

軽い調子で頷く。

やる気の欠片も感じられない声音。

私は名刺を差し出した。

「東洋出版、編集長の神谷梨沙です。本日は——」

「すみません」

言い終える前に、あっさりと遮られた。

「まだ、書けてないんすよ」

「……えっ?」

思わず、聞き返してしまう。
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