私を言葉で抱く年下作家の溺愛
「……ほんとに」

小さく息を吐く。

「厄介な人ね」

でも、その厄介さが、ちゃんと“武器”になっている。

「雨宮蓮の新作ですか?」

後ろから声がした。木原君だ。

「俺にも読ませてくださいよ」

私は軽く頷いた。

「いいわよ」

データを送る。

木原君は自分の席に戻ると、すぐに読み始めた。

しばらくして——

「……これ」

ぽつりと声が漏れる。私は横目で様子をうかがう。

ページをめくる手が、止まらない。

そして、ふっと顔を上げた。

「これ、本当に小説ですかね」

「……なんで?」

私はあえて、淡々と聞く。

「妙に現実味ありません?」

その一言に、胸が、わずかに揺れる。

「やっぱり雨宮蓮、あなどれないな」

感心したように言う木原君。

私は、何も答えなかった。

ただ、もう一度、画面を見る。
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