私を言葉で抱く年下作家の溺愛
正直な感想だった。あの物語は——他人事じゃない。

ほとんど、そのまま。私達の時間だったから。

すると彼は、さらに腕の力を強めた。

ぎゅっと、逃がさないように。

「それだけじゃない」

耳元で、低く言う。

「俺の気持ちも、書いてる」

——その言葉。

胸の奥が、少しだけ揺れる。

確かに。あの中の青年は。

真っ直ぐで。情熱的で。まっすぐに、相手を追い詰めていた。

『先生、俺。先生に出会ったんだ』

『逃がさないよ。先生は、俺の女神だ』

……あまりにも、純粋で。

少しだけ、怖くなるくらいに。

「俺の気持ち、伝わった?」

その問いに、私はゆっくりと、彼の腕をほどいた。

そして、振り返る。

「……あれは」

できるだけ冷静に言う。

「初恋の青年の想いでしょ」
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