私を言葉で抱く年下作家の溺愛
「新人賞を取った作家が、締切守らないって。失礼ですけど、次はありませんよ」

少し、踏み込む。わざと。

「分かってます?」

すると、彼はふっと笑った。

——その笑い方が、妙に引っかかる。

「分かってますよ」

軽い口調なのに。

なぜか、その一言だけ、やけに静かだった。

「だから困ってるんです」

視線が、真っ直ぐこちらに向く。

無精ひげで、だらしない格好なのに。

その目だけが——妙に、澄んでいた。

……なに、この違和感。

「言葉が、出てこないんですよ」

ぽつりと呟く。

「前は勝手に溢れてたのに」

その声音は、さっきまでの軽さとは違っていた。

ほんの少しだけ、深い。

——だから余計に、腹が立つ。

「……それを、こちらにどうしろと?」

私は冷たく言い返した。
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