私を言葉で抱く年下作家の溺愛
逃げられない。

「とっくに気づいてるだろ」

——その一言で、全部、見透かされる。

否定できない。したくても、できない。

だって、もう分かっている。

ここまで来てしまったことも。

離れられないことも。全部。

「……ほんとに」

小さく息を吐く。

「ずるいわね」

すると彼は、少しだけ笑った。

「今さらだろ」

そのまま、手を引かれる。

もう、抵抗しない。できない。

彼の隣を歩きながら、私は静かに思う。

——帰らないんじゃない。

帰れないんだ。この人の隣から。

手を引かれたまま、彼の家の前に立つ。

ほんの数歩。それだけなのに——足が、動かない。

「どうした?」

蓮は先に玄関を開けて、振り返った。
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