私を言葉で抱く年下作家の溺愛
あの原稿が。あの時間が。

すべて、ここに繋がっている。

「……はい」

相手の話を聞きながら、視線を上げる。

編集部の奥、ガラス越しに、蓮の姿が見えた。

スタッフに囲まれて、笑っている。

もう売れなかった、あの頃の彼じゃない。

確実に、変わった。そして——

世間が、その変化に気づき始めている。

「分かりました。後ほど正式にご連絡いたします」

電話を切って、静かに、受話器を置く。

「……映画化、だって」

小さく呟くと、周囲から、どよめきが起きた。

「すげえ……」

「一気に来たな……」

その中心にいる名前。——雨宮蓮。

私は、もう一度彼を見た。

少しだけ、手の届かないところへ行ってしまいそうな気もした。
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