スターライトパレード
そう言って俯いた私の手に、セナ君のあたたかな手が、そっと重なった。
大きくて、少しだけ骨ばっていて、でも思ったよりずっとやさしい触れ方だった。
「そっか……つらかったな。あー……つらいとか、そんな簡単じゃないよな……きっと……お前をそんな目に合わせた奴のことなんて、許さなくていい」
「……わ、わたし……許さなくて……いいの……?」
「いいよ。誰がなんて言っても、オレはお前が正しいって言い続ける」
その手に、少しだけ力が入る。
握りしめる、というほど強くはない。
逃げなくていいって伝えるみたいな、ちょうどそのくらいの力だった。
許さなくていい。
その言葉が、じわじわと胸に染みていく。
ずっと誰にも言ってもらえなかった言葉だった。
かわいそうだったね、も、つらかったね、も、もちろんうれしかった。
でも、本当に欲しかったのは、たぶんそれじゃなかった。
許さなくていい。
悪くない。
そう言ってくれる言葉だったのかもしれない。
「オレの期待とかさ……いいんだ。おまえがそれでも、あそこで弾いてたの聴けたし。あれでオレは、また五年はがんばれっから」
「ぷっ。なにそれ……」
思わず吹き出す。
涙声のまま笑うなんて、変なのに。
でも、笑った瞬間、自分でもびっくりするくらい胸が軽くなった。
……二年間、抱え続けた重たい鎖が、少しだけ外れた気がした。
どれだけ時間が経っただろう。
泣いたり、話したり、黙ったりしているうちに、私はずっとセナ君が手を握ってくれていたことに気づく。
気づいた途端、急に恥ずかしさがこみ上げてきた。
「あ……あの……ずっと……なんか、ごめん……手……」
「あぁ、そんなん、気にすんなよ」
「……それに、もうひとつ。追加で謝らないと……アイドルなんかって、言っちゃって……ごめんなさい」
「あー、あれな。まあ……アイドル本人に言うのは確かに、ヒデーなー」
「うん……ほんとだよね……」
「うん。マジ無いわー。マジでさ、悪いと思ってんならさ……」
そう言いながら、セナ君はポケットから何かを取り出して、私の手に握らせてきた。
「えっ!?」
「今週末、横アリでライブなんだ。オレたち、頑張ってるからさ。一度でいい。観に来いよ。絶対楽しいから!!」
手の中にあるのは、ライブのチケットだった。
私は目を丸くしたまま、それとセナ君の顔を交互に見る。
そんな私を見て、彼は満足そうに笑った。
「じゃ、待ってる」
そう言って、手を振りながら、ステップでも踏むみたいな軽い足取りで去っていく。
さっきまであんなに真剣な顔をしていたくせに、最後はやっぱり、どこまでも明るい。
その背中を、私はずっと目で追っていた。
見えなくなっても、しばらく視線を戻せなかった。
気づけば空は、すっかり夕暮れだった。
たくさん泣いたあとなのに、心は不思議なくらい晴れやかで、どこかすっきりしている。
風はまだ少し湿っているのに、世界の色だけが澄んで見えた。
あまりにもきれいな夕焼けで、私は思わずスマホを取り出して写真を撮る。
あとから見返したら、きっと今日の気持ちごと、思い出せる気がした。
大きくて、少しだけ骨ばっていて、でも思ったよりずっとやさしい触れ方だった。
「そっか……つらかったな。あー……つらいとか、そんな簡単じゃないよな……きっと……お前をそんな目に合わせた奴のことなんて、許さなくていい」
「……わ、わたし……許さなくて……いいの……?」
「いいよ。誰がなんて言っても、オレはお前が正しいって言い続ける」
その手に、少しだけ力が入る。
握りしめる、というほど強くはない。
逃げなくていいって伝えるみたいな、ちょうどそのくらいの力だった。
許さなくていい。
その言葉が、じわじわと胸に染みていく。
ずっと誰にも言ってもらえなかった言葉だった。
かわいそうだったね、も、つらかったね、も、もちろんうれしかった。
でも、本当に欲しかったのは、たぶんそれじゃなかった。
許さなくていい。
悪くない。
そう言ってくれる言葉だったのかもしれない。
「オレの期待とかさ……いいんだ。おまえがそれでも、あそこで弾いてたの聴けたし。あれでオレは、また五年はがんばれっから」
「ぷっ。なにそれ……」
思わず吹き出す。
涙声のまま笑うなんて、変なのに。
でも、笑った瞬間、自分でもびっくりするくらい胸が軽くなった。
……二年間、抱え続けた重たい鎖が、少しだけ外れた気がした。
どれだけ時間が経っただろう。
泣いたり、話したり、黙ったりしているうちに、私はずっとセナ君が手を握ってくれていたことに気づく。
気づいた途端、急に恥ずかしさがこみ上げてきた。
「あ……あの……ずっと……なんか、ごめん……手……」
「あぁ、そんなん、気にすんなよ」
「……それに、もうひとつ。追加で謝らないと……アイドルなんかって、言っちゃって……ごめんなさい」
「あー、あれな。まあ……アイドル本人に言うのは確かに、ヒデーなー」
「うん……ほんとだよね……」
「うん。マジ無いわー。マジでさ、悪いと思ってんならさ……」
そう言いながら、セナ君はポケットから何かを取り出して、私の手に握らせてきた。
「えっ!?」
「今週末、横アリでライブなんだ。オレたち、頑張ってるからさ。一度でいい。観に来いよ。絶対楽しいから!!」
手の中にあるのは、ライブのチケットだった。
私は目を丸くしたまま、それとセナ君の顔を交互に見る。
そんな私を見て、彼は満足そうに笑った。
「じゃ、待ってる」
そう言って、手を振りながら、ステップでも踏むみたいな軽い足取りで去っていく。
さっきまであんなに真剣な顔をしていたくせに、最後はやっぱり、どこまでも明るい。
その背中を、私はずっと目で追っていた。
見えなくなっても、しばらく視線を戻せなかった。
気づけば空は、すっかり夕暮れだった。
たくさん泣いたあとなのに、心は不思議なくらい晴れやかで、どこかすっきりしている。
風はまだ少し湿っているのに、世界の色だけが澄んで見えた。
あまりにもきれいな夕焼けで、私は思わずスマホを取り出して写真を撮る。
あとから見返したら、きっと今日の気持ちごと、思い出せる気がした。