スターライトパレード
ピーンポーン。

インターフォンの音で目が覚めて、私は飛び起きた。
時計を見るより先に玄関へ向かう。

「宅配ボックスにお願いします!」

昨日のライブ後、
「遠慮しなくていいから!」とセナ君にほとんど無理やりタクシーに押し込まれて帰宅した私。
帰りの車内でも頭の中はライブのことでいっぱいで、家に着いても全然眠くならなくて。

そのままの勢いで……
スターライトパレードのBlu-ray、全部ポチった。

今日、さっそく届いたみたい。
我ながら、勢いがすごい。

配信されてる楽曲は、もう全部スマホに入れたし、YouTubeチャンネルもずっと観ていたせいで、気づいたらそのまま爆睡。
……ライブが土曜日で本当によかった。

こんな感覚、ピアノをやってた頃以来かも。

新しい曲を知りたくて仕方ない感じ。
もっと見たい、もっと聴きたいって、次から次へと手が伸びてしまう感じ。
もう二度と、あんなふうに夢中になれるものなんてないと思ってた。

まさか私が、アイドルの曲作りに挑戦することになるなんて。
……きっと誰も、想像してなかった。

届いたBlu-rayは、全部で3枚。
観るなら、やっぱり一枚目からだよね。

昨日見た彼らの姿より、もっと前……
三年前、デビュー当時の映像。

……セナ君、十七歳!?
遊里君に至っては十二歳!?

思わず一時停止して見返してしまう。
幼い、というほどじゃないのに、今よりずっと輪郭があどけない。
なのに、もうちゃんとステージの真ん中に立っている。

でも、他のメンバーも、デビュー前から先輩たちのステージに立っていたらしい。
すごいなぁ……
みんな、当たり前みたいにここまで来たわけじゃないんだ。

一通りライブ映像を観た。
楽曲も、何度も繰り返し聴いた。
メンバーごとの歌い方の違いも、曲によって変わる空気も、少しずつわかってきた気がする。

……よし。

作ってみよう。
私の、初めての曲。

そう決めたときは、ちゃんと書ける気がしていた。
少なくとも、何かひとつくらいは掴めると思っていた。

……そう思ったのに。

「あれ……?どうしたら……?あれ……?」

机に向かって、ノートを開く。
鍵盤に手を置く。
でも、その先が出てこない。

耳コピして、楽譜に書き起こしてみたりもする。

「なんでこの転調……?」
「なんで、こんなにシンプルなのに……?」

理論的には、わかる。
コードも、構成も、メロディの運びも。
どうして耳に残るのか、どこで盛り上がるのか、分析はできる。
でも、違う。

私がこれまで弾いてきたクラシックとは、全然違う。

イントロが短い。
ピアノなんてない。
コード進行はたった四つ。
なのに、ちゃんと世界がある。

いきなりサビから始まる曲もある。
知らなかった音、音楽とさえ思わなかったような音までが、楽器として使われてる。
息を吸う音みたいな間も、手を叩く音も、電子音も、全部ひっくるめて一曲になっている。

「……なにこれ……」

楽譜には書けても、曲が生まれない。
音は並んでいるのに、音楽にならない。
私の『音楽』の定義では、届かない。

たった四小節のイントロ。
ピアノの装飾音なんて、一音もない。
ただの、ギターのリフ。

なのに……
耳から、離れない。

どうして?
なんで?
その答えがわからないまま、何度も何度も同じ場所を巻き戻す。

書けなかった。
ワンコーラスどころか、一音すら。

気づけば、次の土曜日になっていた。

ノートには、途中で止まったメモと、意味のないコード進行の断片ばかり。
部屋の中には、聴きすぎた曲がまだうっすら残っている気がするのに、私の中からは何も出てこない。

「……作曲って、すごいなぁ……」

ようやく出たのは、そんな情けない感想だけだった。
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