スターライトパレード
……一曲目。

そのイントロが流れた瞬間、思わず手すりを握りしめた。

何度も聴いたはずのあの曲なのに、ライブで聴くと、まるで別物だった。
音が熱を持ち、歌詞が叫びに変わり、振り付けが『生き様』に見えた。
一音一音が、音符のままじゃなくて、人の体温を持って飛んでくる。

このステージのために、彼らはずっと走ってきたんだ。

その事実が、胸を強く締めつける。
何時間もかけた準備も、見えないところで回っていたたくさんの手も、全部この瞬間のためにある。
私は……この人たちの音を作りたい。
私の音で、このステージをもっと強くしたい。
もっと遠くまで届くものにしたい。

頭の中に楽譜が広がる。
音にならない音が、少しずつ形になっていく。
今までみたいに理屈から入るんじゃなくて、先に熱があって、そのあとから音が追いついてくる感覚だった。

ライブ終盤。アンコール。
マイクを置いた彼らが手を繋ぎ、大きく息を吸い込む。

『ありがとうございましたぁぁぁああ!!』

……でも、音はまだ鳴っていた。

歓声が響く中、私はずっと音を探していた。

彼らの声。
動き。
想い。
汗。
ファンの叫び。
手を伸ばす気配。
光に向かって揺れる無数のペンライト。

それらすべてが、旋律になろうとしていた。
楽譜じゃない。コード進行でもない。
『気持ち』が先にあって、音があとからついてくる。

こんな感覚、初めてだった。
……きっと、これだ。
私が作りたいのは、『正しい曲』じゃない。
彼らと、彼らを好きな『誰か』の心を繋ぐ、そんな音だ。

今なら……書けるかもしれない。

ライブ後。
メンバーは明日のミーティングのため、そのまま控室へ向かっていった。

私は八神さんに案内された、空いていたホテルの一室へ入る。
ドアが閉まった瞬間、ようやく一人になったはずなのに、頭の中はさっきまでよりずっと騒がしかった。

食事もとらず、私はずっと、今日のライブを何度も思い返していた。
セナ君の煽りも、椿さんの言葉も、信さんの歌い出しも、客席の光も。
手は、ありもしないピアノを空中で叩いていた。
鍵盤なんてないのに、指先だけが先に動く。

……消えないで。

そう願いながら、私は夢中で空中に音を探していた。
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