スターライトパレード
「えっと……みんなのことです。みんなは、私たちにとって『星』みたいな存在だから」

一度息を吸って、続きを言う。

「だから、ずっと、私たちが見上げたら……いつでも輝く『星』でいてください」

言い切った瞬間、うわあ恥ずかしい、と思った。
でも、嘘はなかった。

「……なにそれ……なんかずるい……こういうの……」
「あれ?遊里君、泣いちゃった?」
「ち、ちがうし!!泣いてないし!!バカ!バカ蓮!!」

わちゃわちゃしはじめた空気に、ようやく自分も息ができる。
怖かった。
でも、それ以上にうれしかった。

レコーディングにはいろんな準備があるらしく、八神さんと楽曲買取の契約を後日交わすことになった。

私は音源を渡して、会議室を後にする。

心が、ふわふわしていた。
足元が少し浮いてるみたいに、現実感がない。
あまりにも嬉しくて、でもどこか信じきれなくて、何度も胸のあたりを押さえたくなる。

……自分の曲を聴いてもらうって、こういうことなんだ。

ラブレターを読まれるのと、似てるのかもしれない。
なんて、ラブレターなんて書いたことないんだけど。
でもたぶん、隠しておきたいのに見てほしいとか、怖いのに渡したいとか、そういう矛盾した気持ちは近い。

恥ずかしいけど、見てほしくて。
怖かったけど、みんなの反応が嬉しくて。
……とんでもないご褒美をもらっちゃったみたい。

どうしよう。
叫びたいくらい、嬉しい。

「奏!」

背中から呼ばれて、振り返る。

会議室から出てきたセナ君が、そこにいた。
さっきまでみんなの中にいたのに、今は私だけを見ている。

「完成したら、一番に聴かせるから」
「……うん!待ってる!」
「約束な」

そう言って、セナ君は小指を立ててみせる。
いつもの軽さみたいなのに、不思議と胸の奥に深く残る仕草だった。

私は慌てて小指を立て返す。
ちゃんと結べたのかもわからないくらい、一瞬だった。
セナ君は満足したみたいに少し笑って、また会議室へ戻っていった。

……名前。呼ばれた。
初めて、名前で。

今までずっと『なぁ!』とかだったのに。
あんなにさらっと、当たり前みたいに。

その事実が遅れて胸に落ちてきて、私はその場にへなへなと座り込んでしまった。
乗るはずだったエレベーターが閉まる音がしても、しばらく動けなかった。
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