スターライトパレード
ライブ当日。
もしかして。
いや、でも、まさか。
そんなふうに考えているだけで、胸の奥がそわそわして落ち着かない。
快晴……を通り越して、猛暑。予報は37℃。
ライブは十七時からだけど、雰囲気を感じたくて少し早めに会場入りした。
まだ三回目のライブなのに、会場が近づくだけで自然と胸が高鳴る。
駅から人の流れがもう違う。
歩いているだけで、今日ここに集まる熱量みたいなものが伝わってくる。
会場前にはファンが溢れ、グッズ売り場には長蛇の列。
Tシャツ、タオル、ペンライト……みんな誇らしげに『推し』をまとっていた。
髪にリボンを結んでいる子も、うちわを大事そうに抱えている子も、どこか嬉しそうで、始まる前からもうライブの中にいるみたいだ。
私も……ちゃんと『ファン』に見えるかな?
そんなことを考えてしまうくらい、いつの間にか私は、もうただの見学者じゃなくなっていた。
届いたチケットをスタッフに見せると、意外なほどスムーズに通された。
会場内に一歩足を踏み入れると、空気が一変する。
天井が高く、広すぎる空間が音を反響させる、そのわずかな『遅れ』までが特別に思えた。
まだ開演前なのに、ざわめきそのものがもう音楽みたいで、胸がきゅっとする。
案内された座席は、信じられないくらいステージが近い。
近い、というより、もはや怖いくらい近い。
ここ、本当に座っていい席なのかなと何度も周りを見てしまう。
客席が次々に埋まっていく中、時間だけが私を置いていくような感覚。
みんなは友達と話したり、写真を撮ったり、ペンライトの色を確かめたりしているのに、私だけがうまく呼吸できない。
今、彼らは……このどこかの裏側でスタンバイしてるのかな。
「完成したら一番に聴かせるから」
セナ君の声が、不意によみがえる。
……やばい。心臓、本当に破けそう。
あの時は勢いで受け取った言葉なのに、今ここで思い返すと重みが全然違う。
この大きな会場で、あの曲が鳴るんだろうか。
本当に?
早く来過ぎたかも。
こんな調子で最後まで持つのかな……
客電が落ちた瞬間、ドーム全体が星空のように光り出した。
一斉に掲げられるペンライト。七色の光が波のように揺れる。
それは客席なのに、まるで天井のない夜空みたいだった。
ステージ中央にゆっくりと現れるシルエット。
順に照らされていくメンバーの姿とともに、歓声が爆発する。
「東京ーーー!!!お前ら!!最後だぞ!!騒ぐ準備できてるか……!!!?」
椿さんの声。
掠れているのに、なぜか心の奥まで届く、不思議な声だった。
力任せじゃないのに、会場全部を一瞬でつかんでしまう。
最後に会ってから、まだ一か月しか経っていないのに。
どうしてこんなにも会いたかったんだろう。
何度も聴いた曲。何度も弾いた曲。
なのに、ライブで聴くと、どうしてこんなにも心を揺さぶられるんだろう。
音も、光も、熱も……全部がステージから溢れて、客席を包み込んでいた。
歌が始まるたびに、会場の空気まで形を変える。
知っているはずのイントロが鳴るたび、胸の中のどこかを正確に撃ち抜かれる。
あっという間の四時間。
アンコールが鳴り響く中、肩を叩かれて振り返ると、そこには八神さんが立っていた。
「奏さん。メンバーが呼んでます」
言われるがまま席を立ち、会場裏へ向かう。
裏側に入っても、アンコールの声がまるで風みたいに聞こえてくる。
さっきまで客席にいたのに、今度はその熱の裏側を歩いていることが、まだうまく信じられない。
カーテンをくぐった先に、ライブTシャツ姿のメンバーがいた。
「あ!奏じゃーん!!」
いきなり遊里君が飛びついてきて、転びかけたところを怜央さんが支えてくれる。
「こーら、遊里」
「あはっ、ごめんごめん!曲、本当にありがとう!」
そう言って、遊里君はすぐステージへと向かっていく。
通り過ぎざまに、他のメンバーも背中を軽く叩いてくれた。
ほんの一瞬なのに、その触れ方にちゃんと温度があって、胸が熱くなる。
「約束、しただろ。一番最初に聴かせるって」
背後から聞こえたセナ君の声に、ハッとして振り返る。
もしかして。
いや、でも、まさか。
そんなふうに考えているだけで、胸の奥がそわそわして落ち着かない。
快晴……を通り越して、猛暑。予報は37℃。
ライブは十七時からだけど、雰囲気を感じたくて少し早めに会場入りした。
まだ三回目のライブなのに、会場が近づくだけで自然と胸が高鳴る。
駅から人の流れがもう違う。
歩いているだけで、今日ここに集まる熱量みたいなものが伝わってくる。
会場前にはファンが溢れ、グッズ売り場には長蛇の列。
Tシャツ、タオル、ペンライト……みんな誇らしげに『推し』をまとっていた。
髪にリボンを結んでいる子も、うちわを大事そうに抱えている子も、どこか嬉しそうで、始まる前からもうライブの中にいるみたいだ。
私も……ちゃんと『ファン』に見えるかな?
そんなことを考えてしまうくらい、いつの間にか私は、もうただの見学者じゃなくなっていた。
届いたチケットをスタッフに見せると、意外なほどスムーズに通された。
会場内に一歩足を踏み入れると、空気が一変する。
天井が高く、広すぎる空間が音を反響させる、そのわずかな『遅れ』までが特別に思えた。
まだ開演前なのに、ざわめきそのものがもう音楽みたいで、胸がきゅっとする。
案内された座席は、信じられないくらいステージが近い。
近い、というより、もはや怖いくらい近い。
ここ、本当に座っていい席なのかなと何度も周りを見てしまう。
客席が次々に埋まっていく中、時間だけが私を置いていくような感覚。
みんなは友達と話したり、写真を撮ったり、ペンライトの色を確かめたりしているのに、私だけがうまく呼吸できない。
今、彼らは……このどこかの裏側でスタンバイしてるのかな。
「完成したら一番に聴かせるから」
セナ君の声が、不意によみがえる。
……やばい。心臓、本当に破けそう。
あの時は勢いで受け取った言葉なのに、今ここで思い返すと重みが全然違う。
この大きな会場で、あの曲が鳴るんだろうか。
本当に?
早く来過ぎたかも。
こんな調子で最後まで持つのかな……
客電が落ちた瞬間、ドーム全体が星空のように光り出した。
一斉に掲げられるペンライト。七色の光が波のように揺れる。
それは客席なのに、まるで天井のない夜空みたいだった。
ステージ中央にゆっくりと現れるシルエット。
順に照らされていくメンバーの姿とともに、歓声が爆発する。
「東京ーーー!!!お前ら!!最後だぞ!!騒ぐ準備できてるか……!!!?」
椿さんの声。
掠れているのに、なぜか心の奥まで届く、不思議な声だった。
力任せじゃないのに、会場全部を一瞬でつかんでしまう。
最後に会ってから、まだ一か月しか経っていないのに。
どうしてこんなにも会いたかったんだろう。
何度も聴いた曲。何度も弾いた曲。
なのに、ライブで聴くと、どうしてこんなにも心を揺さぶられるんだろう。
音も、光も、熱も……全部がステージから溢れて、客席を包み込んでいた。
歌が始まるたびに、会場の空気まで形を変える。
知っているはずのイントロが鳴るたび、胸の中のどこかを正確に撃ち抜かれる。
あっという間の四時間。
アンコールが鳴り響く中、肩を叩かれて振り返ると、そこには八神さんが立っていた。
「奏さん。メンバーが呼んでます」
言われるがまま席を立ち、会場裏へ向かう。
裏側に入っても、アンコールの声がまるで風みたいに聞こえてくる。
さっきまで客席にいたのに、今度はその熱の裏側を歩いていることが、まだうまく信じられない。
カーテンをくぐった先に、ライブTシャツ姿のメンバーがいた。
「あ!奏じゃーん!!」
いきなり遊里君が飛びついてきて、転びかけたところを怜央さんが支えてくれる。
「こーら、遊里」
「あはっ、ごめんごめん!曲、本当にありがとう!」
そう言って、遊里君はすぐステージへと向かっていく。
通り過ぎざまに、他のメンバーも背中を軽く叩いてくれた。
ほんの一瞬なのに、その触れ方にちゃんと温度があって、胸が熱くなる。
「約束、しただろ。一番最初に聴かせるって」
背後から聞こえたセナ君の声に、ハッとして振り返る。