花咲く森のから騒ぎ
「本当は、とても賢い王が強権をふるって、税収の改革してくれるのが一番いいわ。この村の徴税官は、まぁまぁいい人だから助かってるの。わたしは葦を納めているんだけど刈り取るのが大変なのよ」
森番の仕事だけでは食べて生けないので、副業として、葦を狩ったり、薬草を積んだりしているのだ。時には、羊の毛刈りを手伝いに行く事もある。
「まぁ、今のところ、何とかやってるわ。ケイティ達が小麦や芋を送ってくれるから、ほんとうに助かってるの」
なぜか、少し哀しげに目を絞るようにして私を見つめ始めた。
「おまえ、相変わらず痩せてるな。去年、ばぁちゃんが死んだ時、うちで暮せよって言ったのに。なんで来なかったんだよ。森での生活は寂しくないのか?」
私は肩をすくめる。
「わたし、都会での生活が苦手なの。何をすればいいのか分からないわ」
「捨て子の俺が何不自由なく暮しているのにさ、マイラが森で苦労しているなんておかしいよ」
「ううん。何もおかしくないわよ。こう見えて幸せよ。それにしても、しばらく見ないうちに大きくなったわね。チェルシーとはよく会ってたけど、あなたは寄宿学校にいたものね」
前は、私と同じくらいの背丈だったのに、たった四年で別人のように高身長になっている。しかも、骨格が逞しくなっていて精悍そのものだ。
「ガキの頃は、おまえが俺を見下ろしていたもんな。色々と屈辱的だったぜ」
「えっ、屈辱?」
「心は男なのに女の子扱いされていたからな」
ニヤリと笑う。その口許がちょっと色っぽくて、何だか、見知らぬ殿方と会話しているみたいな気持ちになり、急に照れ臭くなってきた。おかしいわ。どぎまぎしてしまっている。でも、そんな私の動揺など知らない彼は楽しげに話している。
「この人が第十七代アルベール公爵様の奥様のイヴォンヌ様だよ」
「とても綺麗な方ね。特に目元が愛らしいわ!」
アルべール公爵は謀反の罪で殺されたのだが、王族と縁の深い美しいイヴォンヌ様は公爵と離婚することを条件に恩赦を受けている。
そして、イヴォンヌヘンリー王の公式寵妃となり、娘のアンを産んでいるのだ。
獄中のアルベール公爵は妻が王のものになったことさえ分からず、鳥のように腕を羽ばたかせて惚けていたようだが、投獄された四年後に亡くなっている。
「アルベール様の御一家がいなくなった後も、ここは綺麗に保たれているのね」
「ここはイヴォンヌ様の持ち物として登録されているからな。イヴォンヌ様が亡き後はアン王女の私財となったようだ」
主がいない館だというのに、サロンのテーブルに置かれた花瓶には季節を彩る色とりどりの花が綺麗に生けられている。
「王の妻が亡くなった後、正式に後妻となったのよね。でも、本当は結婚したくなかったでしょうね」
これは、あくまでも噂だが、どうしてもイヴォンヌと結婚したかった王は妻を毒殺したというふうに囁かれている。
「だが、結婚すればアンは王女として認められるから、結婚するしかなかったのさ」
そんな話をしていると、私達の背後に人が来た。管理人の女性は丸顔の穏やかな雰囲気の御婦人だった。
「あのう……、お茶をお持ちしましょうか?」
「いや、もう帰るよ。マイラも腹ペコだろう?」
「そう言えば、朝から何も食べてないわね」
森番の仕事だけでは食べて生けないので、副業として、葦を狩ったり、薬草を積んだりしているのだ。時には、羊の毛刈りを手伝いに行く事もある。
「まぁ、今のところ、何とかやってるわ。ケイティ達が小麦や芋を送ってくれるから、ほんとうに助かってるの」
なぜか、少し哀しげに目を絞るようにして私を見つめ始めた。
「おまえ、相変わらず痩せてるな。去年、ばぁちゃんが死んだ時、うちで暮せよって言ったのに。なんで来なかったんだよ。森での生活は寂しくないのか?」
私は肩をすくめる。
「わたし、都会での生活が苦手なの。何をすればいいのか分からないわ」
「捨て子の俺が何不自由なく暮しているのにさ、マイラが森で苦労しているなんておかしいよ」
「ううん。何もおかしくないわよ。こう見えて幸せよ。それにしても、しばらく見ないうちに大きくなったわね。チェルシーとはよく会ってたけど、あなたは寄宿学校にいたものね」
前は、私と同じくらいの背丈だったのに、たった四年で別人のように高身長になっている。しかも、骨格が逞しくなっていて精悍そのものだ。
「ガキの頃は、おまえが俺を見下ろしていたもんな。色々と屈辱的だったぜ」
「えっ、屈辱?」
「心は男なのに女の子扱いされていたからな」
ニヤリと笑う。その口許がちょっと色っぽくて、何だか、見知らぬ殿方と会話しているみたいな気持ちになり、急に照れ臭くなってきた。おかしいわ。どぎまぎしてしまっている。でも、そんな私の動揺など知らない彼は楽しげに話している。
「この人が第十七代アルベール公爵様の奥様のイヴォンヌ様だよ」
「とても綺麗な方ね。特に目元が愛らしいわ!」
アルべール公爵は謀反の罪で殺されたのだが、王族と縁の深い美しいイヴォンヌ様は公爵と離婚することを条件に恩赦を受けている。
そして、イヴォンヌヘンリー王の公式寵妃となり、娘のアンを産んでいるのだ。
獄中のアルベール公爵は妻が王のものになったことさえ分からず、鳥のように腕を羽ばたかせて惚けていたようだが、投獄された四年後に亡くなっている。
「アルベール様の御一家がいなくなった後も、ここは綺麗に保たれているのね」
「ここはイヴォンヌ様の持ち物として登録されているからな。イヴォンヌ様が亡き後はアン王女の私財となったようだ」
主がいない館だというのに、サロンのテーブルに置かれた花瓶には季節を彩る色とりどりの花が綺麗に生けられている。
「王の妻が亡くなった後、正式に後妻となったのよね。でも、本当は結婚したくなかったでしょうね」
これは、あくまでも噂だが、どうしてもイヴォンヌと結婚したかった王は妻を毒殺したというふうに囁かれている。
「だが、結婚すればアンは王女として認められるから、結婚するしかなかったのさ」
そんな話をしていると、私達の背後に人が来た。管理人の女性は丸顔の穏やかな雰囲気の御婦人だった。
「あのう……、お茶をお持ちしましょうか?」
「いや、もう帰るよ。マイラも腹ペコだろう?」
「そう言えば、朝から何も食べてないわね」