花咲く森のから騒ぎ

10

「よう、すまない。マイラ、待たせたな」

 しばらくすると、ジョシュアが一人で戻ってきた。真っ暗な夜道を馬で駈けると目立つので徒歩でこっそり移動したのだ。

 今、ジョシュアは、修道士のような古ぼけた外套を身にまとい頭巾で顔を隠して俯いている。しかし、屋敷に入って、私と顔を合わせた瞬間、外套を外して髪をほどいた。

 金色の髪がサラサラと肩を彩っている。チェルシーの中にジョシュアの魂が入ると魅力が倍増するわね。さすがだわ。
 
 ほんと、危険なまでに美しくて、胸がザワザワと揺らぐような、そんな輝きを放っているのよね。

 妖精のような儚さと少年の凛々しさが合体したような感じなのよ。

 王子が夢中になる気持ちが分かる気がするわ。ジョシュアは女としての生活が長いだけあってドレスの着こなしも心得ている。ケイティ達と商品を仕入れているから、私より、お洒落の知識も多いわ。

「俺は、目立つように派手なドレスを着るよ。真っ赤なドレスにする」

「ジョシュア、チェルシー達は無事なの? 王子はどうなった?」

「王子は失神したままで全然起きないらしいよ。そんなことより、花が、もうすぐ枯れそうなんだ。俺としては、そっちの方が心配だよ。明日か、あるいは、あさってまでに、花の季節が終わる。終わったら、十二年間、俺たちは入れ替わったままになる」

 あれからずっと森に潜んでいたせいね。チェルシーの足元や白いドレスの裾は土で汚れている。靴下にも泥がはねている。

「チェルシーの髪が汗くせぇな。風呂に入ってサッパリしたいな。しっかし、また、チェルシーに戻っちまったな。男に戻ったら、マイラに言いたい事があったんだけど、バタバタして言えなくて残念だよ」

「言いたいことって?」

「今は内緒だ」

 なーんてことを言いながら意味深なウインクをしている。

 私を見つめる眼差しの奥には熱っぽいものがこもっている。

 ジョシュアの気持ちが伝わってきた。ジリリと頬が火照ってしまう。

「おまえは俺にとっては何よりも大切な女の子だ。誰にも渡したくないと思いながらも、身体が元に戻らないままじゃどうにもならなくて、もどかしかったよ」

 トクントクンっと、鼓動が速まってきた。やだ。恥ずかしくなってきたわ。焦れたように胸が疼いてワーっと叫びたくなる。

 どうしよう。嬉しくて涙が止まらない。喉が震えて身体も震えてきたじゃないの。少し戸惑っていると、こちらを見つめながら、ジョシュアが照れくさそうに言った。

「クソ。早く元の自分に戻りたいな。そしたら、思いっきり抱きしめてキス出来るのになあ。これじゃ、どうしようもない。おまえは王子の中にいるし俺はチェルシーだ」

「そ、そうね」

 この会話、どこまで続くのかしら。私は、ドキドキした心を抑える為にも深呼吸をしていく。

 王子の部屋の前には従者がいる。今夜チェルシーの姿になったジョシュアは別の部屋で眠るのだ。

「明日、絶対に成功させるわ! みんなで元の身体に戻るのよ! ねぇ、約束だからね!」

     ※

 ということで、翌朝、ジョシュアの身支度が始まった。

 貴婦人の朝は、まずは沐浴から始まる。この館のメイド達がバスタブにたっぷりのお湯を用意してくれているみたいね。

 もちろん、私も王子として自室で沐浴を済ませている。

 外見がチェルシーのジョシュアは、パタパタっと粉白粉を首筋にはたいている。羽のついた扇子にレースの飾りのついた白い日傘。それらは、チェルシーの実家の売り物である。

 ジョシュアがチェルシーだった頃、あちこちの宴に顔を出して、商品を売り込んだおかげで売り上げは伸びたのだ。実際に、ジョシュアが使ってみていいと思う物を職人に作らせているので品質もデザイン性もバッチリなのよ。

 それにしても、上流家庭の子女の装いを整えるのは色々と面倒くさいものなのね。

「マイラ、頼む。コルセットの紐を縛ってくれ」

「うん、分かった」

 私は、ジョシュアが美しくなる様子を感心したように見つめ続けていた。

 刺繍がほどこされた豪華なドレスの胸元に幅の広いサテンのリボンを結ぶのが昨今の流行である。

 へーえ、知らなかった。ジョシュアったら、香り袋を下着に取り付けているのね。

 優美なショーを見ているような気分になってくる。

「なぁ、マイラ、おまえ、ちゃんとアンにを話したんだろうな」

「ええ、バッチリよ。アンは、喜んで協力すると言ってくれたわ」

 ただし、森の秘密に関しては何も話していない。あくまでも、ウィリアム王子としてアン王女に協力を求めたのだ。約束の時刻になるとアンが王子の部屋にやってきた。

「あら、そろそろ出発しますわよ。お兄様、遅れますわよ」

 アンは、しっかりと身支度を整えている。アンとチェルシーは村外れにある花畑へと向かうのだ。女二人で油絵を描くことになっている。お忍びで出掛けるお姫様。従者の数も最小限にしている。

『アンと行く。余も行く』

 ダビデがそう言うのでアンは鳥を肩に乗せてあげた。

「では、皆の者、余は、護衛の者達と共に鷹狩りに出かけるぞ。アンは、チェルシーと仲良くするのだぞ」

 これから、私はハンスを連れて東側にある猟場、つまり青の森へと向かう事になっている。

 アンとチェルシーは四輪馬車に乗って花畑へと向かう。その警護は王子の従者達が行なうように命じている。

 そこは絶景ポイント。一面に広がるラベンダー畑は御伽の国のように美しいことで有名なのによ。

 アンとジョシュア(見た目はチェルシー)が、収穫を終えた畑を横切り、人里離れた林の脇の街道を通るのだ。
 
 そして、アン達を乗せた馬車は途中で立ち往生することになっている。

 林道の途中で、我々は、先に罠を仕掛けておいた。道を塞ぐように木を切り倒してある。馬車はそこで停止する。この地点で襲わせるつもりで、わざとそういう状況を作ったのである。

 鬱蒼とした林の向こう側に人里があるが、この周囲には誰もいない。

「これは困りましたな。木が倒壊して道を塞いでおりますぞ」

「この大木を動かすには人手が必要だな」

 御者や護衛の者達は、困り果てたように何かコソコソと話している。二人いた護衛のうちの一人が、葦毛の馬に乗ってどこかへ駆けていった。この木材を除去するための道具や人手を探しにいったのかもしれない。

 私は、林の奥にある廃墟となった小屋の奥から望遠鏡で外の様子を見ていた。今のところは何も起こっていない。

「王子、もっと、大勢の助っ人を頼んだ方が良かったのではありませんか?」

 私の隣にいるのは、元、密猟者のハンスだけ。

「いや、ハンス、おまえ達だけでいい」

 大勢の人間に応援を求めたなら、敵に悟られるという大きなリスクを背負うことになる。

 ジョシュアの予想ではこうだった。そんなに大人数の刺客は現れない。せいぜい、二、三人だろうと予測している。

しかし、不思議なことに尾行してきた者など一人もいないのだ。

 ずーっと待っているのに、誰も襲わないってどういうことなのよ。もしかして、アンの情報は嘘だったの? 

 多感なお年頃なんだものね。もしかしたら、ただの妄想ってやつだったのかもしれないわ。やれやれ、なんて人騒がせな姫さんなのかしら。

 アンとたジョシュアは、馬車から降りてドレスの裾をつまみあげた格好で道に立っている。一本道を阻む樫の木を見下ろしている。

 急に道路で立ち往生して困り果てている様な芝居をしているのである。何も知らない御者は、せっせと馬車の整備をしている。

「ハンス、そなたは、少し離れた場所にいてくれ。余は、あちらに向かう」

 いつまでも、アン様を足止めする訳にもいかないわね。

 そう思った私は、小屋から出て馬車を阻む倒木を片付ける手伝いでもしようかと思って街道へと近付いていった。しかし、その時、異変が起こったのである。

 それまで、おとなしくアンの肩に乗っていた七色の鳥が不意にサーッと飛び立ち始めた。

「あっ、待って! あなたは、どこに行くつもりなのですか!」

アンは、蝶々を追いかける少女のように両手を広げた。そのまま、よたよたとした足取りで駆けている。アンは、馬車から離れて農道の左側の林の奥へと入っていく。

 あら、嫌だ。迷子になったらどうするのよ。

「アン様、いけません! 迷子になりますよ!」

ジョシュアがアンを引きとめようとするが、アンは鳥を追うことに夢中なのね。潅木の中へ押し入っているわ。ジョシュアーは馬車から降りて駆け出そうとした。

しかし、その直後のことだった。ジョシュアの背後から御者が口を塞いだ。

「貴様、何をする!」

 アンの護衛の士官の若者が咄嗟に止めようとした。しかし、すでに遅かった。

 御者は、士官に向かってナイフを素早く投げていたのである。その腕は確かだった。士官は胸を押さえて倒れ込んでいく。

「うっ……」

 もうすでに、ジョシュアは御者に薬をかがされて気を失っている。

 傷を負いながらもジョシュアを助けようとした士官は、御者が投げた短刀によって肩を刺され、今度こそ、彼はその場から動けなくなった。

 御者は、何の感情も顔に浮かべることなく、淡々と馬車と馬を接続していた馬具を取り外している。

 やばいわ。なんということなの! おとなしそうに俯いて手綱を握っていたあいつが、刺客だったなんて。

 多分、チェルシーが独りになる瞬間をずっと見計らっていたのだろう。だから、アン王女が、そこからいなくなるタイミングを待っていたんだわ。

 このままじゃ連れ去られてどこかで殺されてしまう! ジョシュアを助けなくちゃと焦りながら、私は夢中になって斜面を駆け出していく。

 林の間から御者の背中を狙って矢を放ったつもりだった。しかし、手元が狂った。しまった! 大きく外れたではないか!

「待て! 許さんぞ!」

 王子として威厳を放ちつつ相手を威嚇したつもりだが、しかし、待てと言われて、素直に待つような相手ではない。

 御者はイラついたように舌打ちをしている。チェルシーの身体を肩に担いだままの姿勢で振り向いている。チェルシーをどこかに連れ去って監禁するつもりだったのかもしれない。

 だけど、王子の姿を見たからには、とっとと逃げることが先決だと思ったようだ。

 捕らえられて拷問されることだけは避けたいのだろう。

 刺客は、チェルシーの身体を地面に下ろすと胸に剣を突き刺そうとしたのである。

 そんなことさせるもんですかとばかりに、私は、刺客の右肩めがけて矢を放つ。

 すると、微かに矢が御者の腕をかすめた。御者は、手にしていた剣を握り締めたまま、腕から血を流している。

 私とは別方向から下ってきたハンスの姿を見ると御者は自分一人で逃げることを選択した。馬の腹を蹴り走り出している。それを見たハンスが叫んだ。

「待て!」

普通に追ったのでは馬に追いつけないことは最初から分かっているが、ハンスは素早く動き出している。山道はクネクネと曲がりくねっている。ハンスは、疾風のように斜面を滑り降りてショートカットをして追いつこうとしている。

「そうか! 余も、あやつを追い詰めるぞ!」

 とは言うものの、私はすでに息切れをしているのよ。ハァハァ。困ったことに、我々と馬との距離はどんどん広がっている。このままでは逃がしてしまう……。

 山を下った先は道が開けて馬も走りやすくなる。こうなると、もうお手上げだ。

 けれども、その馬の前に、突然、風のようにヒューっと馬の前方から何かが一直線に飛んできた。速すぎて、それが何なのか分からなかった。それは、なんと、あの鳥だったのだ。

「ああーーーーーーーーーッ!」

御者の男は、額を押さえて苦しげな呻き声をあげている。

「あわわっ。目が、目が見えない……!」

 馬は、背上の乗り手の悲鳴に驚いてヒヒーンといななき、前足を高く上げて身を震わせている。急激な傾斜のせいで、そんなふうに暴れたものだから、刺客は、そのまま馬に振り落とされて地面に転落していたのである。

 すると、男の顔に鳥が飛びついた。バサッバサッ。羽をばたつかせて顔を覆っている。

「うっ!」

 どうやら、鳥に右目を突かれたのね。手のひらで目を押さえたままの状態で悶絶している。きゃー。血が出てるわよ。

「まぁ、なんてことかしら。もしかして、鳥には悪人が分かるのかしら」

 いつのまにか、アン王女が私の背後に立っていた。アンは、この光景を目撃してショックを受けている。

「ダビデは、急に方向転換をしたかと思うと、悪人めがけて突進しましたのよ。あの鳥は、まるで、あの御者の行く手を阻むかのように飛んでいましたのよ。驚きましたわ」

 こんなことを考えるのは、おかしいのかもしれないけれど、まるで、鳥自身が意志を持っているかのよう……。いや、まさかね。状況を把握して、私達を救ってくれたように見えたのは、私だけではない筈である。

「お兄様、きっと、鳥は、悪人の逃げ道を知っていたのですわ。それで待ち伏せしていたのかもしれませんわ。この子は、本当に賢い鳥ですわね」

「ああ、そうだな」

 ハンスはすでに御者を縄で縛り上げている。

 私は、気絶しているジョシュアを介抱していく。気を失っているだけならいいけれど、何か毒でも飲まされたのではないかと心配だわ。

ハラハラして思わず涙ぐみそうになる。

「ねぇ、お願いよ。返事をして! ねぇ、ジョシュア! 目を覚まして!」

 ペチペチと頬を軽く叩くが無反応。コルセットがきつくて失神する娘が多いので、貴婦人は、日々、気付け薬を持参している。

 気が付いてくれるかしら?

 私は、それを嗅がせてから軽く頬を叩くと、ジョシュアは、やがて、うっすらと目を開けてくれた。まだ意識は朦朧としているらしい。

「うっ……」

 微かな呻き声が漏れた。ああ、良かった。まだ視界はぼんやりしているようだけれども、意識はしっかりしているようだ。私は耳元で囁いた。

「目が覚めたのね……、ジョ、いや、チェルシー、そのまま、しばらく木陰で休んでいるのよ」

 今、私は王子でジョシュアは美少女のチェルシーなんだものね。あと少しの間、芝居を続けなくてはいけない。

 私が、お姫様抱っこの状態でチェルシーの身体を運んでいったのだ。そして、清潔で柔らかな芝の上に寝かせて、どこか怪我はしていないかを確認していく。

 どうやら、チェルシーの身体は無事なようね。

「ねぇ、そこのあなた大丈夫なのですか? お水をもっと飲みますか?」

 アンは、もうひとりの怪我人のことを気にしていた。ハンサムで若い士官の顔が痛みに歪んでいるものだから、アンは、不安そうに彼に水を飲ませていた。

「斬られたようだな」

 そう言ったのは元密猟者のハンス、彼が、士官の脇腹に布を押し当てながら言う。

「応急処置はしておいたが、早く、医者に縫ってもらった方がいいぞ」

「お兄様、大変ですわ。この護衛の士官を早く助けなければ……」

 ハラハラして涙目になっているアンは士官の若者を仰ぎ見ている。

「ア、アン様、僕のことならば心配ありません。こ。こんなものは、ほんの、かすり傷ですよ」

 彼は健気にそう答えたが、見たところ、思ったよりも護衛の若い士官の傷は深いわ。

 ハンスは医者を連れてくると言うと、馬に乗って立ち去った。

 私は、士官のそばにしゃがみこむと、その顔を覗き込む。

「おおっ、何ということなのだ。顔色が悪いぞ。ひどく痛むであろうな。余の妹のためにすまなかった。おそらく、この近くに余の従者達がいるはずである。早く、彼等を探して呼び寄せるとしよう」

 すると、そう言った直後のことだった。ちょうどいい感じで助っ人がやってきたのである。

「王子!」

「アン様! 御無事ですか!」

 それは、倒木を退ける為に村人を呼びに出掛けたアンの護衛官と王子の従者達だった。

 異変に気付いた彼等は慌てふためいてる。一国の王女の馬車の御者が暗殺者だったのだから、皆が驚くのも無理はないわね。

 私は、出来る限り厳しい顔つきで言う。

「この者を見よ。とんでもない悪人であるぞ!」

 刺客は気絶しているし縄で縛り上げられているので静かだ。仮に目覚めたところで、どこにも逃げられやしない。

「我が妹は暴徒によって襲われたのだ。おまえ達、王都にてこの男のことをみっちりと調べるのだぞ。王家に対する謀反である! 何者の指図によるものか調べ上げねばなるまい!」

 もちろん、私は知ってるわ。本当は、こいつは、アンじゃなくてチェルシーを狙っていたのよ。アン自身も、自分が狙われたと主張してくれると約束してくれていたのである。

『うふふ。楽しみですわね。実行犯が、エリザベスの名を告げたならば、お兄様は、即座にあの女を罰して離縁すればよろしいのですわ』

 エリザベスと大司教を失墜させる。それこそが、ジョシュアの狙いなんだもの。

 だから、こう言っておいた。

『むろん、余は、厳しく罰するつもりである』

 こうして、アンのおかげで上手くいった。刺客をおびき寄せるための作戦も成功して実行犯が捕まったのだ。さて、この後のことは、このアンに任せるとして……。

 とりあえず、私は皆に向かって告げた。

「二度とこのようなことが起こらぬよう、しっかりと我が妹の護衛を頼むぞ! 協力してくれたハンス達に報奨金を渡しておいてくれ。ハンス、御苦労であった」

ということで、まず、ひとつ片付けた!

しかし、もう時間がない。私は、アンをここから帰らせる為にこう言った。

「さぁ、今すぐ、怪我人を連れて王都に戻りなさい。ここは田舎だ。宮廷の侍医に診てもらう方がいい」

果たして、この刺客は、この犯行を依頼した黒幕が誰なのかを素直に吐くのだろうか。

とにかく、今回は、チェルシーを無事に守りきることが出来て良かった。

 だけど、もっと大きな問題が残っている。王子の意識と身体が元に戻ったら、我々全員が罰せられることになるかもしれない。私が王子として暮らすという選択肢は無い。かといって、ジョシュアが王子になる訳にもいかない。

 どうしたものかと悩んでいるとアンが気遣うように言った。

「お兄様もお疲れのようですわね。今回のことはお兄様のせいではありませんわ。悪いのはエリザベスです。アンは、先に王都に戻ります。ごきげんよう。法務官に引き渡して、この悪人をしっかり裁かせますわね。でも、残念ですわ。ダビデがおりません」

 結局、どっぷり日が暮れた頃、アンは、王都へと戻っていくことになったのである。アンは空っぽになった鳥篭を大切そうに抱えている。

 大切なオモチャを失ったような表情は、今まで見た中で一番幼く見える。

 アンはダビデのことが好きだったのよね。

「案ずるなあの鳥は、また帰って来るであろう」

「でも、鳥は、自由に空をはばたくのが一番なのかもしれませんわね……」

 アンが泣き笑いの表情を浮かべている。可愛い子だわ……。ちょっと風変わりな女の子だけど、この赤毛の女の子には奇妙な魅力があった。

「もしも、あの鳥がみつかったなら、必ず、アンのもとに届けさせるからな」

 ああ、刻々と時間が過ぎていく。もうじき日が暮れる。早く、チェルシー達のいる森に戻らねばならない。
 
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