花咲く森のから騒ぎ
「マイラ、おまえ、今日は腹いっぱい食えよ。御馳走を用意してあるぜ」
言いながら、優しい目で笑ながら手を引いてくれている。
「さぁ、行こうぜ」
☆
半時間ほどかけて馬で移動すると辿り着く。先刻のアルベール邸に比べると規模が小さいが、この別荘も綺麗で立派で調度品も上品だ。これは、叔母と叔父が生きていた頃に建てられたものである。
貧しい村娘だった叔母の出世ぶりを村人達に知らしめる為に、わざわざ、この村に建てたらしい。いかにも叔母らしいエピソードだ。
おばぁちゃんは、若い頃に夫を亡くして苦労している。本当は、ここでおばぁちゃんが暮らせるようにと願っていたのだが、おばぁちゃんは住み慣れた小屋での生活を好んだのである。
実は、あたしも、この館の管理人をしてくれと頼まれたけれど断っている。だって、ここの管理人は子持ちの寡婦で、ここでの住み込みの仕事がなくなると、彼等が困るんだもの。
ダイニングテーブルの席に着くなり、ジョシュアが勧めてきた。
「さぁ、マイラ、どんどん食ってくれ」
樫の木のテーブルの上に素朴で温かみのある家庭料理がズラリと並べられている。
「鴨のコンフィは私の大好物よ。とても美味しい」
気の毒な事に、ケイテイは偏頭痛のせいで鎮痛剤を飲んで休んでいるという。
「ねぇ、あなた達はどうなってるの? まるで本当に入れ替わったみたいに見えるんだけど」
やけに男らしくなったジョシュア。やけに女々しくなったチェルシー。
私が視線を向けると二人は神妙な面持ちで頷き合った。すると、チェルシーが訥々と語り出した。
「あたしは昨日までジュシュアだったの。でも、また魂が入れ替わったの」
半信半疑の状態のまま、二人を交互に見つめ返しているとジョシュアが言った。
「マイラ、赤の森に行こうぜ! 説明してやるよ」
「駄目よ。鳥の年には絶対に入ってはいけないのよ」
「平気よ。マイラお姉ちゃんも一緒に森に行きましょう。赤い花の樹の下に行けば、すべてが分かるわ」
チェルシーが熱心にこちらを見つめている。
ジュシュアも、私を説得しようとしているみたいだ。
「ていうか、そこに行かない限り、おまえは何を聞いても信じないさ。真実が知りたいのなら、騙されたと思ってついて来いよ」
そこまで言われると見に行くしかない。私達は馬に乗って移動することにした。鬱蒼とした森はどこかしら不気味な空気が立ちこめている。私は一人なら絶対にこんな所に来ないわ。チェルシーが大木を見上げている
「見て……。ここが七色の鳥の聖地なのよ」
昼間でも、この森は薄暗い。ブォーッと鳥肌が立ちそうになる。幻想的な光景だった。蝋燭に照らされた神秘の樹の枝に大粒の赤い花が咲き乱れている。
「十二年前、夕刻、七色の鳥が樹に帰ってきた。あたしとジョシュアはパンを分け合って飢えをしのいだの。その時、鳥がパンを狙って襲ってきたの。あたしは驚いてジョシュアに抱きついたの。その時、どさっと倒れて、偶然、唇が触れたの」
予想外の展開に言葉をなくしていると、チェルシーが私の頬に手を当てて顔を引き寄せてきた。そのまま、大胆に自分の唇で私の唇を塞いでしまったのだ。
えっ、何なの。
言いながら、優しい目で笑ながら手を引いてくれている。
「さぁ、行こうぜ」
☆
半時間ほどかけて馬で移動すると辿り着く。先刻のアルベール邸に比べると規模が小さいが、この別荘も綺麗で立派で調度品も上品だ。これは、叔母と叔父が生きていた頃に建てられたものである。
貧しい村娘だった叔母の出世ぶりを村人達に知らしめる為に、わざわざ、この村に建てたらしい。いかにも叔母らしいエピソードだ。
おばぁちゃんは、若い頃に夫を亡くして苦労している。本当は、ここでおばぁちゃんが暮らせるようにと願っていたのだが、おばぁちゃんは住み慣れた小屋での生活を好んだのである。
実は、あたしも、この館の管理人をしてくれと頼まれたけれど断っている。だって、ここの管理人は子持ちの寡婦で、ここでの住み込みの仕事がなくなると、彼等が困るんだもの。
ダイニングテーブルの席に着くなり、ジョシュアが勧めてきた。
「さぁ、マイラ、どんどん食ってくれ」
樫の木のテーブルの上に素朴で温かみのある家庭料理がズラリと並べられている。
「鴨のコンフィは私の大好物よ。とても美味しい」
気の毒な事に、ケイテイは偏頭痛のせいで鎮痛剤を飲んで休んでいるという。
「ねぇ、あなた達はどうなってるの? まるで本当に入れ替わったみたいに見えるんだけど」
やけに男らしくなったジョシュア。やけに女々しくなったチェルシー。
私が視線を向けると二人は神妙な面持ちで頷き合った。すると、チェルシーが訥々と語り出した。
「あたしは昨日までジュシュアだったの。でも、また魂が入れ替わったの」
半信半疑の状態のまま、二人を交互に見つめ返しているとジョシュアが言った。
「マイラ、赤の森に行こうぜ! 説明してやるよ」
「駄目よ。鳥の年には絶対に入ってはいけないのよ」
「平気よ。マイラお姉ちゃんも一緒に森に行きましょう。赤い花の樹の下に行けば、すべてが分かるわ」
チェルシーが熱心にこちらを見つめている。
ジュシュアも、私を説得しようとしているみたいだ。
「ていうか、そこに行かない限り、おまえは何を聞いても信じないさ。真実が知りたいのなら、騙されたと思ってついて来いよ」
そこまで言われると見に行くしかない。私達は馬に乗って移動することにした。鬱蒼とした森はどこかしら不気味な空気が立ちこめている。私は一人なら絶対にこんな所に来ないわ。チェルシーが大木を見上げている
「見て……。ここが七色の鳥の聖地なのよ」
昼間でも、この森は薄暗い。ブォーッと鳥肌が立ちそうになる。幻想的な光景だった。蝋燭に照らされた神秘の樹の枝に大粒の赤い花が咲き乱れている。
「十二年前、夕刻、七色の鳥が樹に帰ってきた。あたしとジョシュアはパンを分け合って飢えをしのいだの。その時、鳥がパンを狙って襲ってきたの。あたしは驚いてジョシュアに抱きついたの。その時、どさっと倒れて、偶然、唇が触れたの」
予想外の展開に言葉をなくしていると、チェルシーが私の頬に手を当てて顔を引き寄せてきた。そのまま、大胆に自分の唇で私の唇を塞いでしまったのだ。
えっ、何なの。