花咲く森のから騒ぎ
3
これは、なかなかの難問だ。私だってチェルシーを救いたいと思っている。やっと、女の子に戻れたというのに、好きでもない王子の愛人にさせられちゃうなんて、そんなの可哀想だ。
だけど、どうすりゃいいのよ! 私にはお手上げだわ。解決策などまるで浮かばなかった。
「はぁ、なんですって! 王子がこの村にお忍びで来る?」
朝、そんな事をケイティから聞かされて心臓が止まりそうになった。
「今年の夏は、久しぶりにチェルシーが湖畔の別荘で過ごすと聞いた王子が、お忍びで来られているのよ。ふふっ。あんたに内緒にしておいて良かったわ。いいわね。明日、王子の別荘に行くのよ」
ええーーーーー。そんなの困る。
ケイティには理解できないでしょうけど、私はチェルシーじゃないのよ。
「……行かなかったらどうなるの?」
「ジョシュアを地下室に永遠に閉じ込めるわよ」
それは困る。こうなりゃ、当たって砕けろよ! 私には選択の余地がなかった。
仕方がないので、翌日、チェルシーのフリをして王子とデートすることにしたのである。
けれども、王子が迎えによこした豪華な馬車で移動する間も、ずーっと青褪めていた。
だって、私は、田舎育ちの庶民なのよ。
王族を相手にどう振舞えばいいのか見当もつかないわ。御立派な館の玄関に停まった馬車から降りると、すぐさま侍従らしき若者によってどうぞこちらにと誘われた。
王都から到着したばかりの王子がいる。こ、この人が王子様なんだよね?
作法なんて分からないけど、精一杯、丁寧にお辞儀をしておいた。
頬を引き攣らせて愛想笑いを浮かべて王子に敬意を示すと、王子は、パーっと嬉しそうに目を輝かせた。
「よく来たな。さぁ、近こう寄れ」
使用人の数も最小限に抑えている。それでも、王子の別荘の天井画や神話をモチーフにした柱の装飾は豪華だった。シャンデリアの大きさにも驚かされる。
王子の衣服も、いつもより地味にしているが、指輪やネックレスは見るからに高価だ。
「そなたはまことに美しいな。海のように青い瞳。薔薇のように可憐な赤い頬。妖精のような細い手足。この世の何よりも高貴な娘であるぞ」
嬉しそうにハグをしている。
「余は、そなたと、こうして二人きりで会える日を夢見ていたぞ。王都では、何かと人目が煩わしくていかんな」
生まれて初めて王子と対面した私は、顔を引き攣らせながらも失礼にならないように曖昧に微笑む。
今の私の外見はチェルシーだもの。仕方ないわね。適当に話を合わせてお茶を飲むしかない。
しかし、王子の名誉のために言っておくが、王子の性格は悪くない。おっとりしている。ただ、なんていうか、ちょっとオツムが足りない感じがするのだ。
困ったわ。こんな場所で、いきなり二人きりなんてキツイわ……
☆
何か話しかけられたらどうしようかと身構えていると、次の瞬間、ふと、珍しい生き物が目に入った。頭は黄色だけど、首筋は青くて羽根の先は色々な色が混ざっている。何ともカラフルな鳥で大きさはオウムぐらいである。最初は作り物なのかと思った。
『余は、王となる。余を称えよ!』
いきなり、鳥が喋り出したので驚いた。
だけど、どうすりゃいいのよ! 私にはお手上げだわ。解決策などまるで浮かばなかった。
「はぁ、なんですって! 王子がこの村にお忍びで来る?」
朝、そんな事をケイティから聞かされて心臓が止まりそうになった。
「今年の夏は、久しぶりにチェルシーが湖畔の別荘で過ごすと聞いた王子が、お忍びで来られているのよ。ふふっ。あんたに内緒にしておいて良かったわ。いいわね。明日、王子の別荘に行くのよ」
ええーーーーー。そんなの困る。
ケイティには理解できないでしょうけど、私はチェルシーじゃないのよ。
「……行かなかったらどうなるの?」
「ジョシュアを地下室に永遠に閉じ込めるわよ」
それは困る。こうなりゃ、当たって砕けろよ! 私には選択の余地がなかった。
仕方がないので、翌日、チェルシーのフリをして王子とデートすることにしたのである。
けれども、王子が迎えによこした豪華な馬車で移動する間も、ずーっと青褪めていた。
だって、私は、田舎育ちの庶民なのよ。
王族を相手にどう振舞えばいいのか見当もつかないわ。御立派な館の玄関に停まった馬車から降りると、すぐさま侍従らしき若者によってどうぞこちらにと誘われた。
王都から到着したばかりの王子がいる。こ、この人が王子様なんだよね?
作法なんて分からないけど、精一杯、丁寧にお辞儀をしておいた。
頬を引き攣らせて愛想笑いを浮かべて王子に敬意を示すと、王子は、パーっと嬉しそうに目を輝かせた。
「よく来たな。さぁ、近こう寄れ」
使用人の数も最小限に抑えている。それでも、王子の別荘の天井画や神話をモチーフにした柱の装飾は豪華だった。シャンデリアの大きさにも驚かされる。
王子の衣服も、いつもより地味にしているが、指輪やネックレスは見るからに高価だ。
「そなたはまことに美しいな。海のように青い瞳。薔薇のように可憐な赤い頬。妖精のような細い手足。この世の何よりも高貴な娘であるぞ」
嬉しそうにハグをしている。
「余は、そなたと、こうして二人きりで会える日を夢見ていたぞ。王都では、何かと人目が煩わしくていかんな」
生まれて初めて王子と対面した私は、顔を引き攣らせながらも失礼にならないように曖昧に微笑む。
今の私の外見はチェルシーだもの。仕方ないわね。適当に話を合わせてお茶を飲むしかない。
しかし、王子の名誉のために言っておくが、王子の性格は悪くない。おっとりしている。ただ、なんていうか、ちょっとオツムが足りない感じがするのだ。
困ったわ。こんな場所で、いきなり二人きりなんてキツイわ……
☆
何か話しかけられたらどうしようかと身構えていると、次の瞬間、ふと、珍しい生き物が目に入った。頭は黄色だけど、首筋は青くて羽根の先は色々な色が混ざっている。何ともカラフルな鳥で大きさはオウムぐらいである。最初は作り物なのかと思った。
『余は、王となる。余を称えよ!』
いきなり、鳥が喋り出したので驚いた。