花咲く森のから騒ぎ
 昔、そんなふうに眉を下げてジョシュアが私に抱きついていたのだが、今のチェルシーの雰囲気は、当時のジョシュアによく似ている。声のトーンがソックリ。

「チェルシー、うじうじと泣くなよ!」

 ジョシュアが自分のポケットから古いハンカチを取り出した。チェルシーの洟をかんでやっている。だが、ハンカチの刺繍に見覚えがあった。

 それは、私がチェルシーにプレゼントしたものだ。ジョシュアは、それを見つめながら笑っている。

「このハンカチのブルーベリーの染み、結局、とれないんだな。あの時、おまえ、食い過ぎてゲロ吐いたよな」

「……そ、そうなんだけど」

 なぜ、それをジョシュアが知っているのかしら。五年前、一緒にピクニックしたのはチェルシーなんだけど……。

「ジョシュア……。なんで、チェルシーのハンカチを持ってるのよ」

「これは、おまえがオレの為にスミレの刺繍をしてくれたものだぜ。あれから、ずっと大切に持ってるんたよ」

 ジョシュアはこっちを見ている。何だか自信ありげに唇の右端だけを上げて笑っている。この独特の笑い方はチェルシーと同じだということに気付いてしまいドキッとなる。

 うそっ。まさか。

 ゾワゾワとしたものが背中に押し寄せてきた。もしかしたら、本当に二人は入れ替わっていたのかもしれない。

 だけど、なんで、今更、元に戻るのよ?

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