花咲く森のから騒ぎ
 わざと人けが少ないところを歩いて、無防備な状態になったところに刺客が現れるように仕向ける作戦だというのだが、相手が大人数だった場合、対処することが難しいので、どこをどう歩くか、慎重に作戦を立てなければならない。

「死なないように気をつけてね。あなたが死んだらチェルシーは、一生、自分の身体に戻れなくなっちゃうのよ」

「そうだな。俺も、リスクが大きいことはちゃんと分かっているさ」

 それでも、やるしかないのよね。あっちから仕掛けられる前に仕留めてやるわ。

「それにしても、ローザという女性は気の毒だよな、大司教の愛人になるくらいなら監獄に入る方がマシだと思ったんだな」

 そんな事を言い合っていた時、王子である私の元に監獄の看守からの手紙が届いたのだ。
 
「王子様、どうぞ」

 銀の盆に載った封筒を受け取り、何かしらと思って読んでみると、その内容はこうだった。

 差出人はお役所の下級書記官。

『怖れながら申し上げます。盗みや税の滞納といったことは治安判事の管轄なので王子の御意思を尊重するとおっしゃいました。しかし、魔女に関しては王子の意向には添えないと大司教様が申されていますす。ですから、ローザは再び牢獄に戻りました』

 手紙を読み終えた私は怒りに燃えていた。くそーっ、なんなのよ! ロ-ザを魔女扱いするなんて許せない。

 王子といえども、宗教裁判には口を出すなということなのね!

 私は眉間にシワを寄せて唇を噛み締める。
 
「今すぐにでも、大司祭を殴ってやりたいわ。執念深い男ね」

「あいつ、えぐい性格をしているな」

「大司教を敵にまわすとやっかいね。私とジョシュアと密猟者数人だけで対抗するのは難しいかもしれないわね」

「クソッ。どうすりゃいいのかな。同志がいればいいんだけどな。あっ、そうだ。いたぞ! ひとり、心当たりがあるぜ」

 言っている途中でジョシュアがパッと目を輝かせた。何かひらめいたのか心地よさそうに呟いている。

「そうだよ。利用しない手はないぜ。権力者には権力を持って対抗するんだよ! あいつらを懲らしめてやるのさ! 目には目を悪には悪知恵を!」

「いい策でもみつかったの?」

 ポカンとしていると、ジュシュアがニヤッと笑った。

「ちょっとした罠を仕掛けるんだよ。それには、アン様にも協力してもらわなくちゃならないけどな。きっと快く賛成してくれるぜ! マイラ、ちょっと耳を貸せよ」

「ん……?」

 ポカンとしている私に顔を寄せて耳打ちしてきた。ふむふむ。なるほど。それは、確かに名案だわ。一か八か……。やってみるだけの価値はあるだろう。

「よし、それじゃ、やるか!」

「そうね。やりましょう」

 こうして、綿密な計画を立てた私達は燃えていた。この先、どう転ぶか分からない。ちょっとした賭けのようたなものだった。

 失敗すると、とんでもない犠牲をはらうことになる。、
 
 私は、神様に祈らずに入られなかった。これには、みんなの運命がかかっているんだもの。

 無事成功することを祈るばかりだわ……。
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