花咲く森のから騒ぎ
王子として威厳を放ちつつ相手を威嚇したつもりだが、しかし、待てと言われて、素直に待つような相手ではない。
御者はイラついたように舌打ちをしている。チェルシーの身体を肩に担いだままの姿勢で振り向いている。チェルシーをどこかに連れ去って監禁するつもりだったのかもしれない。
だけど、王子の姿を見たからには、とっとと逃げることが先決だと思ったようだ。
捕らえられて拷問されることだけは避けたいのだろう。
刺客は、チェルシーの身体を地面に下ろすと胸に剣を突き刺そうとしたのである。
そんなことさせるもんですかとばかりに、私は、刺客の右肩めがけて矢を放つ。
すると、微かに矢先が御者の腕をかすめた。御者は、手にしていた剣を握り締めたまま、腕から血を流している。
私とは別方向から下ってきたハンスの姿を見ると御者は自分一人で逃げることを選択した。馬の腹を蹴り走り出している。それを見たハンスが叫んだ。
「待て!」
普通に追ったのでは馬に追いつけないことは最初から分かっているが、ハンスは素早く動き出している。山道はクネクネと曲がりくねっている。ハンスは、疾風のように斜面を滑り降りてショートカットをして追いつこうとしている。
「そうか! 余も、あやつを追い詰めるぞ!」
とは言うものの、私はすでに息切れをしているのよ。ハァハァ。困ったことに、我々と馬との距離はどんどん広がっている。このままでは逃がしてしまう……。
山を下った先は道が開けて馬も走りやすくなる。こうなると、もうお手上げだ。
けれども、その馬の前に、突然、風のようにヒューっと馬の前方から何かが一直線に飛んできた。速すぎて、それが何なのか分からなかった。それは、なんと、あの鳥だったのだ。
「ああーーーーーーーーーッ!」
御者の男は、額を押さえて苦しげな呻き声をあげている。
「あわわっ。目が、目が見えない……!」
馬は、背上の乗り手の悲鳴に驚いてヒヒーンといななき、前足を高く上げて身を震わせている。急激な傾斜のせいで、そんなふうに暴れたものだから、刺客は、そのまま馬に振り落とされて地面に転落していたのである。
すると、男の顔に鳥が飛びついた。バサバサッ。羽をばたつかせて顔を覆っている。
「うっ!」
どうやら、鳥に右目を突かれたのね。手のひらで目を押さえたままの状態で悶絶している。きゃー。血が出てるわよ。
「まぁ、なんてことかしら。もしかして、鳥には悪人が分かるのかしら」
いつのまにか、アン王女が私の背後に立っていた。アンは、この光景を目撃してショックを受けている。
「ダビデは、急に方向転換をしたかと思うと、悪人めがけて突進しましたのよ。あの鳥は、まるで、あの御者の行く手を阻むかのように飛んでいましたのよ。驚きましたわ」
こんなことを考えるのは、おかしいのかもしれないけれど、まるで、鳥自身が意志を持っているかのよう……。いや、まさかね。状況を把握して、私達を救ってくれたよう見えたのは、私だけではない筈である。
「お兄様、きっと、鳥は、悪人の逃げ道を知っていたのですわ。それで待ち伏せしていたのかもしれませんわ。この子は、本当に賢い鳥ですわね」
「ああ、そうだな」
ハンスはすでに御者を縄で縛り上げている。
御者はイラついたように舌打ちをしている。チェルシーの身体を肩に担いだままの姿勢で振り向いている。チェルシーをどこかに連れ去って監禁するつもりだったのかもしれない。
だけど、王子の姿を見たからには、とっとと逃げることが先決だと思ったようだ。
捕らえられて拷問されることだけは避けたいのだろう。
刺客は、チェルシーの身体を地面に下ろすと胸に剣を突き刺そうとしたのである。
そんなことさせるもんですかとばかりに、私は、刺客の右肩めがけて矢を放つ。
すると、微かに矢先が御者の腕をかすめた。御者は、手にしていた剣を握り締めたまま、腕から血を流している。
私とは別方向から下ってきたハンスの姿を見ると御者は自分一人で逃げることを選択した。馬の腹を蹴り走り出している。それを見たハンスが叫んだ。
「待て!」
普通に追ったのでは馬に追いつけないことは最初から分かっているが、ハンスは素早く動き出している。山道はクネクネと曲がりくねっている。ハンスは、疾風のように斜面を滑り降りてショートカットをして追いつこうとしている。
「そうか! 余も、あやつを追い詰めるぞ!」
とは言うものの、私はすでに息切れをしているのよ。ハァハァ。困ったことに、我々と馬との距離はどんどん広がっている。このままでは逃がしてしまう……。
山を下った先は道が開けて馬も走りやすくなる。こうなると、もうお手上げだ。
けれども、その馬の前に、突然、風のようにヒューっと馬の前方から何かが一直線に飛んできた。速すぎて、それが何なのか分からなかった。それは、なんと、あの鳥だったのだ。
「ああーーーーーーーーーッ!」
御者の男は、額を押さえて苦しげな呻き声をあげている。
「あわわっ。目が、目が見えない……!」
馬は、背上の乗り手の悲鳴に驚いてヒヒーンといななき、前足を高く上げて身を震わせている。急激な傾斜のせいで、そんなふうに暴れたものだから、刺客は、そのまま馬に振り落とされて地面に転落していたのである。
すると、男の顔に鳥が飛びついた。バサバサッ。羽をばたつかせて顔を覆っている。
「うっ!」
どうやら、鳥に右目を突かれたのね。手のひらで目を押さえたままの状態で悶絶している。きゃー。血が出てるわよ。
「まぁ、なんてことかしら。もしかして、鳥には悪人が分かるのかしら」
いつのまにか、アン王女が私の背後に立っていた。アンは、この光景を目撃してショックを受けている。
「ダビデは、急に方向転換をしたかと思うと、悪人めがけて突進しましたのよ。あの鳥は、まるで、あの御者の行く手を阻むかのように飛んでいましたのよ。驚きましたわ」
こんなことを考えるのは、おかしいのかもしれないけれど、まるで、鳥自身が意志を持っているかのよう……。いや、まさかね。状況を把握して、私達を救ってくれたよう見えたのは、私だけではない筈である。
「お兄様、きっと、鳥は、悪人の逃げ道を知っていたのですわ。それで待ち伏せしていたのかもしれませんわ。この子は、本当に賢い鳥ですわね」
「ああ、そうだな」
ハンスはすでに御者を縄で縛り上げている。