花咲く森のから騒ぎ
「あ、あの、すみません。もしかして、王子は何も覚えておられないのですか?」
「覚えておらぬ。おまえ何者だ? 早く申せ!」
「わ、わたしは森番のマイラです。チェルシーの従姉でございます!」
「ああ、おまえはマイラというのか? 妙だな。どこかで見たような気もするが思い出せぬ」
そんな王子にケイティが尋ねた。
「あ、あの……、だけど、王子、チェルシーのことは覚えておられますよね?」
金髪の美しいチェルシーに視線を移すと、王子は物憂げに首を振っている。
「いや、分からぬ。その美しい顔に全く見覚えがないのだ。以前、どこかで会ったのだろうか。どこか懐かしい感じもするが、細かいことは分からぬ。なぜ、我が妹が、こんなところにいるのだね? 何をやっているのだ、アン? いつ、この村に来たのだ?」
「お、お兄様!」
アンは、感極まったように王子に抱きついて叫んでいる。
「お兄様! きっと、悪人を追い払うために山を駆け巡ったせいで疲れ果ててしまったのですわね」
そう言いながら涙ぐんでいる。
「別荘でお休みくださいませ。壊れた橋が直ったなら王都に戻りましょう」
我々四人に関することだけがスポッと記憶から抜け落ちているようである。そんな都合のいい事が起こるとは……。
嘘みたいだわ。こんなの信じられない。どうなっているの?
私は奇妙な違和感を抱えながら王子の横顔を凝視していく。
醸し出す空気が違うのよ。長い間、気絶していた王子は、凛とした顔で立ち上がっていた。我々のことなど振り返ることなく、アンと従者達を従えて歩いている。
その後ろ姿には品格があり、身のこなしも優雅で、この人、本当に王子なのと言いたくなる。私の目には別人のように思えてならなかった。
「覚えておらぬ。おまえ何者だ? 早く申せ!」
「わ、わたしは森番のマイラです。チェルシーの従姉でございます!」
「ああ、おまえはマイラというのか? 妙だな。どこかで見たような気もするが思い出せぬ」
そんな王子にケイティが尋ねた。
「あ、あの……、だけど、王子、チェルシーのことは覚えておられますよね?」
金髪の美しいチェルシーに視線を移すと、王子は物憂げに首を振っている。
「いや、分からぬ。その美しい顔に全く見覚えがないのだ。以前、どこかで会ったのだろうか。どこか懐かしい感じもするが、細かいことは分からぬ。なぜ、我が妹が、こんなところにいるのだね? 何をやっているのだ、アン? いつ、この村に来たのだ?」
「お、お兄様!」
アンは、感極まったように王子に抱きついて叫んでいる。
「お兄様! きっと、悪人を追い払うために山を駆け巡ったせいで疲れ果ててしまったのですわね」
そう言いながら涙ぐんでいる。
「別荘でお休みくださいませ。壊れた橋が直ったなら王都に戻りましょう」
我々四人に関することだけがスポッと記憶から抜け落ちているようである。そんな都合のいい事が起こるとは……。
嘘みたいだわ。こんなの信じられない。どうなっているの?
私は奇妙な違和感を抱えながら王子の横顔を凝視していく。
醸し出す空気が違うのよ。長い間、気絶していた王子は、凛とした顔で立ち上がっていた。我々のことなど振り返ることなく、アンと従者達を従えて歩いている。
その後ろ姿には品格があり、身のこなしも優雅で、この人、本当に王子なのと言いたくなる。私の目には別人のように思えてならなかった。