花咲く森のから騒ぎ
「大昔の、ある鳥の年、森から帰ってきた人間は、空を飛ぼうとして高いところから落ちて死にました。あるいは、鳥の餌しか口にせずに餓死してしまった者も、過去にいたそうでございます。俺は、その話を、幼い頃、俺は叔父から聞いたことがあるのです。あの森には人には知られてはならない秘密があります。これまで、何人もの人が、あの森で鳥になったそうでございます」
ジョシュアは真剣な目をしている。真実を知ろうと必死になっている顔なのよ。
「人間の魂を鳥の中に隠すことも出来るし、そこに閉じ込めることも出来ると教えてくれたのです。忌わしい人間の魂をそこに封じ込める場合、それは監獄となり、高貴な魂を逃がす場合、そこは、魂の箱舟となると言ったのです」
王子が、実年齢より深みのある口調で告げている。
「そうだな。魂は鳥に乗って天に上るとも言われている。鳥の中で一生を終える者も、ちゃんと、神の世界に旅立つことが出来ると、余は思っている」
ジョシュアは、黙って王子を見詰め続けている。とても熱心にその顔を見つめている。何だか怖くなるほどに真剣な目で相手を、ただひたすら見つめている。
王子は、どこか楽しげな表情を浮かべていいる。ジョシュアは緊張している。
「俺の叔父は知的で用心深い人でした」
言いながら、少し切羽詰ったように、突然、声を上げた。
「実は、アルベール公爵にはミカエルという名の甥がおります。甥のミカエルは、狼に食われて死んだと噂されています。もし、ミカエルが生きていると知ったたなら、アルベール公爵様は安心されると思いますか?」
王子は、ジョシュアの突拍子もない質問に対して、非常に穏やかかに微笑んで答えている。
「アルベール公爵の腹違いの妹が産んだ子供、それがミカエルだ。ミカエルは、幼くして両親を亡くしている。乳母と共に忽然と消えた」
「その乳母はどこにいるのか知ってますか?」
「故郷で暮らしておるのではないかな」
それを聞いたジョシュアがホッとしたように息をついている。
「余の父は、アルベールが謀反を起こしたと信じているが、余は、あのアルベールがその様なことをしないと知っている」
なぜ、知っているのか……。それは、あなたが、アルベール公爵自身だから! 私は、こんな仮説を立てずにはいられない。
アルベール公爵は、十二年前、王に捕らえられる前に鳥になり、妻のイヴォンヌがいる王城に住み着いた。そして、十二年後、王の息子と入れ替わって、次期、王となる……。
そんな妄想だ……。
むろん、どこにもそんな証拠はない。しかし、もしその推測が当たっていたら……。
元々、政治能力にたけていた公爵ならば、側近たちに利用されることなくこの国を正しく治めることも出来るだろう。
私は心に溢れる感情を抑えようとして拳を握り締めていく。ジョシュアは王子に向かって深々とお辞儀しながら気持ちを伝えた。
「王子様……。あなたに会えて本当に幸せでございます」
「うむ。余も、そなたたちと知り合えて嬉しいぞ。だが、しばらくは会えぬ。余は、王都に戻らねばならぬ」
「あっ……」
去り行く王子に向かって、私は思わず呟いていた。
「あ、あの! 王子! お願いです。あの鳥を大切にしてあげてください!」
ジョシュアは真剣な目をしている。真実を知ろうと必死になっている顔なのよ。
「人間の魂を鳥の中に隠すことも出来るし、そこに閉じ込めることも出来ると教えてくれたのです。忌わしい人間の魂をそこに封じ込める場合、それは監獄となり、高貴な魂を逃がす場合、そこは、魂の箱舟となると言ったのです」
王子が、実年齢より深みのある口調で告げている。
「そうだな。魂は鳥に乗って天に上るとも言われている。鳥の中で一生を終える者も、ちゃんと、神の世界に旅立つことが出来ると、余は思っている」
ジョシュアは、黙って王子を見詰め続けている。とても熱心にその顔を見つめている。何だか怖くなるほどに真剣な目で相手を、ただひたすら見つめている。
王子は、どこか楽しげな表情を浮かべていいる。ジョシュアは緊張している。
「俺の叔父は知的で用心深い人でした」
言いながら、少し切羽詰ったように、突然、声を上げた。
「実は、アルベール公爵にはミカエルという名の甥がおります。甥のミカエルは、狼に食われて死んだと噂されています。もし、ミカエルが生きていると知ったたなら、アルベール公爵様は安心されると思いますか?」
王子は、ジョシュアの突拍子もない質問に対して、非常に穏やかかに微笑んで答えている。
「アルベール公爵の腹違いの妹が産んだ子供、それがミカエルだ。ミカエルは、幼くして両親を亡くしている。乳母と共に忽然と消えた」
「その乳母はどこにいるのか知ってますか?」
「故郷で暮らしておるのではないかな」
それを聞いたジョシュアがホッとしたように息をついている。
「余の父は、アルベールが謀反を起こしたと信じているが、余は、あのアルベールがその様なことをしないと知っている」
なぜ、知っているのか……。それは、あなたが、アルベール公爵自身だから! 私は、こんな仮説を立てずにはいられない。
アルベール公爵は、十二年前、王に捕らえられる前に鳥になり、妻のイヴォンヌがいる王城に住み着いた。そして、十二年後、王の息子と入れ替わって、次期、王となる……。
そんな妄想だ……。
むろん、どこにもそんな証拠はない。しかし、もしその推測が当たっていたら……。
元々、政治能力にたけていた公爵ならば、側近たちに利用されることなくこの国を正しく治めることも出来るだろう。
私は心に溢れる感情を抑えようとして拳を握り締めていく。ジョシュアは王子に向かって深々とお辞儀しながら気持ちを伝えた。
「王子様……。あなたに会えて本当に幸せでございます」
「うむ。余も、そなたたちと知り合えて嬉しいぞ。だが、しばらくは会えぬ。余は、王都に戻らねばならぬ」
「あっ……」
去り行く王子に向かって、私は思わず呟いていた。
「あ、あの! 王子! お願いです。あの鳥を大切にしてあげてください!」