イケメン狸さんたち、カボチャを届けにくるよ
第十一話 いざ、実行!
警備のおじさんの矮鶏の鳴き声。でも、今日はシャッキ!! とした頭で軽々と起きた。全身にとんでもない量のアドレナリンが流れている。つまり、緊張で全身がエネルギーに溢れかえっている。
さっさと朝ごはんを飲み干し、誰よりも早く田んぼへ出た。
「おい!! こちらも収穫しろ!」
「はい!」
田んぼ仕事は今日で最後だ。もうすぐ自由になるんだ。誰に何言われてもわたしは最高の気分。何言われても落ち込むことなき! わたしはもう無敵。
夕暮れが近づくにつれて、わたしの胸の中のドキドキが強まった。期待大。
やっと夜が訪れ、わたしは小屋の真ん中に座り込み、牙くんが来るのを待った。
待った。
さらに待った。
わたしは1秒1秒数えながら首をなが〜くして待った。
無意識に息をひそめた。いつ来るかいつ来るかと耳をピンと立って玄関の方の音を確認し続けた。
コン
コン
コン
玄関の方だ!
わたしの心臓が魚のようにピチピチ跳ね始めた。
しかし、牙くんに昨夜指示された通り、音立つことなくゆ〜るりゆ〜るりと忍び足で玄関の方へ近づいた。
「準備できた?」
牙くんはわたしの耳の近くで小さくそうつぶやき、わたしはこっくりと頷いた。
牙くんはわたしに真っ黒な着物と袴を渡した。寺子屋で着るものをそのまま墨で真っ黒に染めたものだ。
わたしが着替えているあいだ、牙くんは外で使う道の見回りをしてくれた。もし、誰かに見つかったらおわりだからね。人生終了。まあ、牙くんからしたら狸生終了。
「よし、いこう」
わたしと牙くんは手を繋ぎ、まるで二人の忍者のように暗闇の中を進んだ。
しばらく田んぼが続いた。
やがて、かすかにキンモクセイの香りがするようになり、その香りが一歩一歩歩くことにつれてだんだん強くなった。
鼻がそれでいっぱいになったその時――
月の光に照らされ、キラキラと色とりどりに輝く花畑。
神秘的なほど美しく、一瞬だけ肩の力を抜いちゃった。
(ダメ!! このミッションが失敗に終わるわけにはいけない!! 全身警戒モード!!)
しばらく進むと小さな丸っこい草原に出て、そして、その真中に……
お母さんを治す唯一無二の伝説のカボチャ。
カバンの中に伝説のカボチャをそーっと置き、港と方へと進んだ。
夜の森はシーンとしていて空気は少しジメジメしている。真っ暗。しかし、昨日の夜見た森とまるでまったく違う。とにかく、まるで異国のように感じた。
しばらくすると塩水の香りがしてきた。
やがて、あのなが〜い桟橋と倉庫らしき建物がズラリと並んでいる浜辺が見えてきた。
「伏せ」
少しチクチクする草むらの中から浜辺の様子をうかがった。
「誰かいる?」
「わからん。とにかく」
ぽわっ
ぽわっ
「ゲホッゲホッゲホッ」
「しっー!!」
わたしは煙に巻き込まれながらも必死に咳するのを我慢した。
は〜くしゅんっ!!!
「お前静かにできねぇのか?」
「ごめんなさい」
視線を手の方へ落とすと――
「わ!! すごい!! 木箱だ!!」
牙くんは慌ててわたしの口を塞いだ。
緊張しているから、わたしはいつもより声が出やすい。ごめんなさい。
ペコペコ頭を下げているわたしに呆れながらも牙くんは言った。
「そうだろ。尻尾は木箱の中に入るから見えない。カバンもすっぽり。俺、深川よりも天才だろっ?」
ブンブン頭を縦に振った。
それを見て牙くんは満足し、鋭い目が優しく緩んだ。
「船が来た」
「本当だ」
木箱(狸)2箱が小さな足を出しながらぴょこぴょこと浜辺を渡った。
桟橋を走って、ぽんっ!!と船の中へ飛び込んだ。
見渡す限り、高く積みあげた木箱。わたしは牙くん(木箱)のとなりに座った。
(ほ、ほんとうにできたんだ……わたし、本当にできた!)
「神奈川県に着いたらどうするつもり?」
「そりゃ、化けるっしょ!」
「自分の質問答えてどうすんの!」
わたしは緊張がすっかりとけてクスクスと笑い始めた。
「確かにな、君たちずいぶんうまくなってきたもんね」
ギクッ
振り向いた。そこには――
銀色に光るサラサラ髪の毛と背の高い男の人。
「深川くん?!? ポン助先生?!?!?!」
わたしの理解が追いつくまでに3秒かかった。
「に、にげろう!!」
わたしは咄嗟にそう叫んだ。船から降りろうとした。でも!!
「こら、危ないんでしょう。ゆっくり寺子屋の事務室でお話しようね」
ぽわっ
ぽわっ
わたしと牙くんの変装は一瞬にして暴かれた。
勝ったと思ったのに、なんで……なんで?!
さっさと朝ごはんを飲み干し、誰よりも早く田んぼへ出た。
「おい!! こちらも収穫しろ!」
「はい!」
田んぼ仕事は今日で最後だ。もうすぐ自由になるんだ。誰に何言われてもわたしは最高の気分。何言われても落ち込むことなき! わたしはもう無敵。
夕暮れが近づくにつれて、わたしの胸の中のドキドキが強まった。期待大。
やっと夜が訪れ、わたしは小屋の真ん中に座り込み、牙くんが来るのを待った。
待った。
さらに待った。
わたしは1秒1秒数えながら首をなが〜くして待った。
無意識に息をひそめた。いつ来るかいつ来るかと耳をピンと立って玄関の方の音を確認し続けた。
コン
コン
コン
玄関の方だ!
わたしの心臓が魚のようにピチピチ跳ね始めた。
しかし、牙くんに昨夜指示された通り、音立つことなくゆ〜るりゆ〜るりと忍び足で玄関の方へ近づいた。
「準備できた?」
牙くんはわたしの耳の近くで小さくそうつぶやき、わたしはこっくりと頷いた。
牙くんはわたしに真っ黒な着物と袴を渡した。寺子屋で着るものをそのまま墨で真っ黒に染めたものだ。
わたしが着替えているあいだ、牙くんは外で使う道の見回りをしてくれた。もし、誰かに見つかったらおわりだからね。人生終了。まあ、牙くんからしたら狸生終了。
「よし、いこう」
わたしと牙くんは手を繋ぎ、まるで二人の忍者のように暗闇の中を進んだ。
しばらく田んぼが続いた。
やがて、かすかにキンモクセイの香りがするようになり、その香りが一歩一歩歩くことにつれてだんだん強くなった。
鼻がそれでいっぱいになったその時――
月の光に照らされ、キラキラと色とりどりに輝く花畑。
神秘的なほど美しく、一瞬だけ肩の力を抜いちゃった。
(ダメ!! このミッションが失敗に終わるわけにはいけない!! 全身警戒モード!!)
しばらく進むと小さな丸っこい草原に出て、そして、その真中に……
お母さんを治す唯一無二の伝説のカボチャ。
カバンの中に伝説のカボチャをそーっと置き、港と方へと進んだ。
夜の森はシーンとしていて空気は少しジメジメしている。真っ暗。しかし、昨日の夜見た森とまるでまったく違う。とにかく、まるで異国のように感じた。
しばらくすると塩水の香りがしてきた。
やがて、あのなが〜い桟橋と倉庫らしき建物がズラリと並んでいる浜辺が見えてきた。
「伏せ」
少しチクチクする草むらの中から浜辺の様子をうかがった。
「誰かいる?」
「わからん。とにかく」
ぽわっ
ぽわっ
「ゲホッゲホッゲホッ」
「しっー!!」
わたしは煙に巻き込まれながらも必死に咳するのを我慢した。
は〜くしゅんっ!!!
「お前静かにできねぇのか?」
「ごめんなさい」
視線を手の方へ落とすと――
「わ!! すごい!! 木箱だ!!」
牙くんは慌ててわたしの口を塞いだ。
緊張しているから、わたしはいつもより声が出やすい。ごめんなさい。
ペコペコ頭を下げているわたしに呆れながらも牙くんは言った。
「そうだろ。尻尾は木箱の中に入るから見えない。カバンもすっぽり。俺、深川よりも天才だろっ?」
ブンブン頭を縦に振った。
それを見て牙くんは満足し、鋭い目が優しく緩んだ。
「船が来た」
「本当だ」
木箱(狸)2箱が小さな足を出しながらぴょこぴょこと浜辺を渡った。
桟橋を走って、ぽんっ!!と船の中へ飛び込んだ。
見渡す限り、高く積みあげた木箱。わたしは牙くん(木箱)のとなりに座った。
(ほ、ほんとうにできたんだ……わたし、本当にできた!)
「神奈川県に着いたらどうするつもり?」
「そりゃ、化けるっしょ!」
「自分の質問答えてどうすんの!」
わたしは緊張がすっかりとけてクスクスと笑い始めた。
「確かにな、君たちずいぶんうまくなってきたもんね」
ギクッ
振り向いた。そこには――
銀色に光るサラサラ髪の毛と背の高い男の人。
「深川くん?!? ポン助先生?!?!?!」
わたしの理解が追いつくまでに3秒かかった。
「に、にげろう!!」
わたしは咄嗟にそう叫んだ。船から降りろうとした。でも!!
「こら、危ないんでしょう。ゆっくり寺子屋の事務室でお話しようね」
ぽわっ
ぽわっ
わたしと牙くんの変装は一瞬にして暴かれた。
勝ったと思ったのに、なんで……なんで?!


