光王子と月夜のシンデレラ
「ん~!おいしい♡」
「……うま」
「本当に喫茶ナポリの味じゃない!未桜ちん、すごいわぁ♡」

時刻は夜20時前。非常口から会場をコッソリ出た俺らは、史郎の部屋へ戻ってきた。
時間も時間だし、着替えてすぐに帰ろうかと思っていたら、佐倉さんに引き留められた。
やはり色々と聞かれるか、面倒だな……なんて思っていたが、彼女の口から出た言葉は想定外のものだった。

「い、今宮くん!ごはん食べましょう!私が作ります」

彼女いわく、昼に素うどんとラムネだけだった俺を案じての発案らしい。
ここは史郎のアトリエで、ヤツは普段ここに籠ることもあるため、調理道具や材料一式は揃っていた。
食事に時間をかけるなんてもったいない、常々そう思っているけれど、史郎が嬉しそうに同意してしまった。

「なっちゃんの好物はナポリタンよ。喫茶ナポリのが好きなのよねぇ」
「喫茶ナポリ!行ったことあります、おいしいですよね」
「いや、俺は別に……」
「材料もありそうです。で、では……作ります!」


そう言って彼女は手慣れた手つきで調理を始め、あっという間にいい香りとともにナポリタンが完成し、今に至る。

彼女の特技は料理系って聞いたことがあるけれど、こんなに味まで同じようになるものなのか。
普段の学校での姿からは想像できないような異様な戦闘能力といい、謎が多い。

ちなみに学校において特技は明かす義務はない。
ただ、足の速さだったり知識だったり……わかりやすく言動に現れるため、みんな何となくわかっているという状況だ。

実際、俺の特技だって……
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