先にあなたが捨てたのです。さようなら、陰の王家と呼ばれた一族は隣国にお引越しします
◇ ◇ ◇
将来、立派な国王夫妻になれるよう、エグバード様は王太子教育を、私は王太子妃教育を受けている。
だから、学園に通う必要はないのだけれど、王国というのは国王と王妃だけで成り立つわけではない。
そのため、将来の側近や仲間を作る目的で、エグバード様と私は十三歳からの四年間、ゼイロット学園に通った。
私たちは三歳年が離れているので、エグバード様と一緒に通えたのは一年だけだったけれど、私が卒業した後も、色々な方が折に触れてエグバード様の様子を教えてくれた。
皆の話によると、エグバード様は多くの友人に恵まれ、光り輝くような学園生活を送っているとのことだった。
また、エグバード様とは毎月お茶会を実施しており、その席で彼は、学園生活を含めた様々な出来事について話してくれた。
エグバード様と私には共通の話題が多かったため、大抵の時間は楽しく笑って過ごしたけれど、私の役割の話になると彼は必ず私を非難した。
「冷たい」「情がない」「君の正しさは氷のようだと友人が言っていた」
とはいえ、私の行動は王国にとって必要なものだから、いつか分かってくれるはずだと希望を抱いていたけれど―――ある日、突然潰(つい)えてしまった。
王宮に呼び出された私は、エグバード様から一方的に婚約破棄を宣言されたからだ。
寝耳に水の話に驚く私に、エグバード様は告げた。
「君はいつだって正しくて、歪みがなくて、尖った氷柱(つらら)のようだ! これっぽっちも情がない! 私は君の冷たさにこれ以上耐えられない! 時には間違えたとしても、大らかで優しくて、何だって受け入れてくれるローラがいい。私は彼女と新たに婚約を結ぶ」
エグバード様は彼の腕にぶら下がったふわふわのピンク髪をした少女を見下ろすと、愛おしそうに目を細めた。
そのため、その少女がローラだと悟る。
ローラ・ソーンリー子爵令嬢。
エグバード様の学園の友人リストの中にあった名前だわと気付くと同時に、リストに書かれていた彼女の情報が頭に浮かぶ。
母親を早くに亡くし、甘やかされて育ったせいで、我儘で自分勝手なところはあるが、天真爛漫で甘え上手なご令嬢。
学業は中の下だが、生徒会の手伝いをしていることを理由に、成績上位者が集まるAクラスに在籍が許されている。それから、それから……。
私は混乱したまま、頬を染めて見つめ合うエグバード様とローラを見つめる。
―――捨てられたのはエグバード様より三歳年上の私で、選ばれたのは三歳年下のローラ。
―――捨てられたのは公爵令嬢の私で、選ばれたのは子爵令嬢のローラ。
―――捨てられたのは正しくて冷たい私で、選ばれたのは間違うこともある優しいローラ。
エグバード様が選んだのは、私とまるで正反対の女性だった。
「何だ……エグバード様は私と正反対の女性がタイプだったのね」
婚約してから十五年が経った後で、私はそんな簡単で重要なことに気が付いた。
だから、私は言われるがまま婚約破棄を受け入れ―――心機一転、家族とともにお引越しをしたのだ。
将来、立派な国王夫妻になれるよう、エグバード様は王太子教育を、私は王太子妃教育を受けている。
だから、学園に通う必要はないのだけれど、王国というのは国王と王妃だけで成り立つわけではない。
そのため、将来の側近や仲間を作る目的で、エグバード様と私は十三歳からの四年間、ゼイロット学園に通った。
私たちは三歳年が離れているので、エグバード様と一緒に通えたのは一年だけだったけれど、私が卒業した後も、色々な方が折に触れてエグバード様の様子を教えてくれた。
皆の話によると、エグバード様は多くの友人に恵まれ、光り輝くような学園生活を送っているとのことだった。
また、エグバード様とは毎月お茶会を実施しており、その席で彼は、学園生活を含めた様々な出来事について話してくれた。
エグバード様と私には共通の話題が多かったため、大抵の時間は楽しく笑って過ごしたけれど、私の役割の話になると彼は必ず私を非難した。
「冷たい」「情がない」「君の正しさは氷のようだと友人が言っていた」
とはいえ、私の行動は王国にとって必要なものだから、いつか分かってくれるはずだと希望を抱いていたけれど―――ある日、突然潰(つい)えてしまった。
王宮に呼び出された私は、エグバード様から一方的に婚約破棄を宣言されたからだ。
寝耳に水の話に驚く私に、エグバード様は告げた。
「君はいつだって正しくて、歪みがなくて、尖った氷柱(つらら)のようだ! これっぽっちも情がない! 私は君の冷たさにこれ以上耐えられない! 時には間違えたとしても、大らかで優しくて、何だって受け入れてくれるローラがいい。私は彼女と新たに婚約を結ぶ」
エグバード様は彼の腕にぶら下がったふわふわのピンク髪をした少女を見下ろすと、愛おしそうに目を細めた。
そのため、その少女がローラだと悟る。
ローラ・ソーンリー子爵令嬢。
エグバード様の学園の友人リストの中にあった名前だわと気付くと同時に、リストに書かれていた彼女の情報が頭に浮かぶ。
母親を早くに亡くし、甘やかされて育ったせいで、我儘で自分勝手なところはあるが、天真爛漫で甘え上手なご令嬢。
学業は中の下だが、生徒会の手伝いをしていることを理由に、成績上位者が集まるAクラスに在籍が許されている。それから、それから……。
私は混乱したまま、頬を染めて見つめ合うエグバード様とローラを見つめる。
―――捨てられたのはエグバード様より三歳年上の私で、選ばれたのは三歳年下のローラ。
―――捨てられたのは公爵令嬢の私で、選ばれたのは子爵令嬢のローラ。
―――捨てられたのは正しくて冷たい私で、選ばれたのは間違うこともある優しいローラ。
エグバード様が選んだのは、私とまるで正反対の女性だった。
「何だ……エグバード様は私と正反対の女性がタイプだったのね」
婚約してから十五年が経った後で、私はそんな簡単で重要なことに気が付いた。
だから、私は言われるがまま婚約破棄を受け入れ―――心機一転、家族とともにお引越しをしたのだ。