あなたの隣に私は必要ですか?
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「あなた。アリーシアの件、どうお考えなのですか」
フォンベルタ侯爵夫人は、自分の夫でありアリーシアの父であるフォンベルタ侯爵に詰め寄った。
妻に詰め寄られた侯爵は、やや怯みながらも態度が煮え切らない。
「まぁ待て。この件は少し複雑なのだ。ミーア王女の隣国への輿入れはまだちゃんと、発表されていないが決定事項だ。これが覆る事はない」
「それでもルートヴィッヒ様が護衛としてミーア王女に付いて行く事も考えられますわよね!?」
「それはそうだが、想いを寄せていると分かっている人物を輿入れ先に連れていくなど、隣国に対してあまりにも失礼だ。現実的ではないだろう」
「そんなの黙っていれば分かりませんわよ! ミーア王女に陛下も甘いではありませんか! だから婚約者のいるルートヴィッヒ様を専属護衛に付かせて、大々的に二人の仲を公表しているかのような振る舞いを許されているのではありませんか!?」
噛み付くように言う妻にフォンベルタ侯爵は頭を抱える。
「とにかく待て。近々ルートヴィッヒ殿が話をしにやってくるのだろう? その話を聞いてからでも遅くは無いだろう」
そう言った夫に夫人は不満げな表情を隠そうともしない。
「アリーシアが傷ついてからでは遅いのですけれどね。貴方がそう仰るなら待ちますが、アリーシアを傷つけられたなら、わたくしは絶対に許せませんわよ」
そう言って夫の執務室から勢いよく出ていく妻を見送り、フォンベルタ侯爵はため息を吐いた。
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ミーア王女とのお茶会から二週間が経った。
まだルートヴィッヒからの連絡はなく、アリーシアの心に影が差し込む。
(やはりわたくしからお父様に相談して……いいえ、もう少しだけ待ちましょう。あともう少し……わたくしの心が完全にルートヴィッヒ様の事を聞いても何も感じなくなるまで……)
そう思いながらため息を吐いた時、部屋の扉がノックされた。
「どうぞ」
「失礼致します」
入ってきたのは、アリーシア付きのメイドだった。
「アリーシアお嬢様。お手紙が届いております」
「そう。誰からですの?」
「エルンザーレ侯爵子息様からでございます」
その名前を聞いた途端、大きく動揺した。
(駄目よ。名前を聞いただけでこんなに心を乱すなど、わたくしはまだまだですわ)
アリーシアは自分を律しながら、必死に動揺を隠した。
メイドから手紙を受け取ったアリーシアは、メイドを一旦下げさせ、改めて手紙を見る。
確かにルートヴィッヒが直筆で書かれた手紙であった。
読み進めると、三日後にこちらに来て話がしたいという内容が書かれてある。
(いよいよなのですね。この三日間の間にルートヴィッヒ様への想いは完全に封じ込めないと……)
アリーシアは大きく息を吸い込み、自身の気持ちを落ち着かせようとする。
それから、両親にも三日後にルートヴィッヒが来訪する事を伝えた。
「ようやくちゃんと話をする機会が出来ましたわね。アリーシア、しっかりと二人で話し合いなさいね」
「いざという時には、我々も介入する事になるやもしれん。まずはお前が納得のいくまで話すといい」
両親の言葉に、アリーシアはしっかりと頷いた。