嘘つきな先輩は、エリート弁護士になった元カレにすべてを暴かれる

7. 夜に溺れる(後)

「変わってませんね。感じるとこも、感じやすいのも。……流石に、下は脱がせてもいいですよね?」

 律人がそっと寝間着に手をかけて、私は仕方なく頷いた。それから、立て続けにイかされて荒い息をどうにか整え、もぞもぞと体を反転させる。

「……いちかさん?」
「後ろから、……して」

 なるべく──脱がずに、体を見られずに『する』には、この体位が一番いい。腰を突き出すような姿勢が卑猥に思えて、顔が見えないのも嫌で、ほとんどしたことがない体位だけれど、今は逆に、顔が見えないのが好都合だった。
 私の提案に、律人は少し迷うような素振りを見せ──けれども、「わかりました」と大人しく頷いた。
 律人の手が、下着ごと、私の服を脱がせていく。下半身が曝け出されると、途端に何か、羞恥とは異なる、心もとないような気持ちになって、私は思わず軽く手を握った。
 大丈夫だ。
 今日だけ。
 これで、すべてがおしまいだから──

「……いちかさん」
「……!!」

 背中に、律人が覆いかぶさってくる。
 耳元で、声が聞こえる。ぴったりと重なった体、その体温に、ぐっと、突き上げるように胸が痛んだ。痛みがそのまま涙になって、堪える間もなく一筋目元から溢れる。
 温かい。

「入れますね。……痛かったり、嫌だったりしたら、すぐ、言って下さい」

 優しい声のうちに、隠しきれない熱を宿して、耳元に吹き込むみたいに律人が言う。私は頷く。
 ゆるく開かされた脚の間に、途方もなく熱いものが触れる。濡れそぼった割れ目を指先が割り開き、あてがわれたものが、ぐっと中に入ってくる。

「……っ……!」

 大きい。
 久々に感じる熱さと質量とに、体が戦慄く。それは痛みへの恐怖ではなく、明らかな、この先への期待によるものだった。目を閉じる。

「っ、……あ、あ、……」

 中に入ってくるのに合わせて、押し出されるように声が溢れる。その声の甘ったるさに頬が染まり、律人が耳元で安心したみたいに笑う。

「よかった、……すみません、全部、入れますね」

 ぐっ、と。
 腰を掴まれ、そのまま一気に押し込まれ──流石に、捩じ込まれたときの痛みに呻きが溢れる。けれどもそれより、耳元に零された吐息が熱くて、私はふるりと背中を震わせた。
 ぴったりと、くっついている。

「……っは、あ、……いちかさん、……」
「ん、っ、……大丈夫、」

 案じるみたいに名前を呼ばれて、咄嗟に、安心させるみたいに、それが収まっている己の下腹部を撫でる。入っている。ちゃんとできている。私は安心し──同時に、それが入っている、という事実を改めて感じ、勝手に体がきゅうっと震えた。

「っ、あ!」
「あ、っ……いちかさん、……くそ、待たなくていいなら、そう言って下さいよ」
「違う、ッ、あ、……や、あ、あっ……!」

 ぎゅうっ、と両腕で体を抱きしめられ、律人の熱さに、全身を包まれる。大きな手のひらが胸元を鷲掴み、私の大きくない胸を揉みしだき、先程と同じように服越しに先端をつまみ上げ──同時にぐりっと性器で奥を抉られて、突然の快感に頭の中が真っ白になった。

「あ、あ、ッ、や、あッ……!」
「や、……じゃ、ないでしょ、すごい、締まって……」
「言わな、ッあ、……!」

 乳首への愛撫と中への刺激が同時に行われ、過剰な快感に、勝手に体が逃げようとしてしまう。律人は腕に力を込め、そんな私を強く引き留めた。

「いちかさん、っ、いちかさん……!」

 律人が私の肩口に顔を埋め、ひどく切羽詰まったような、切ないような声で私の名を呼ぶ。
 声が、直接耳へと吹き込まれる。逃げることもできず、私は律人の激情のすべてを体に叩きつけられる。
 腰の動きがどんどん早くなり、律人の手が、びしゃびしゃに濡れて膨らんだ私の花芯へと伸びてくる。中を穿つ動きと同時にそこを強く摘まれ、私は思い切り中を締め付けた。

「あ、あ、ッ、……ああッ……!!」

 私の体を抱きしめる律人の片腕に、思わず、片手でしがみついてしまう。唇から溢れた涎がシーツに溢れ、それをすくい取るみたいに、律人の唇が私の唇を掠めた。

「いちかさん、っ、……好きです、……ずっと好きだ……」
「っ、……ん、んんんッ……!!」

 びくびくと、律人のものが、中で震える。熱いものが中に放たれたのを確かに感じ、同時に、その熱に押し上げられるみたいに、じわりと重い快感が下腹部で弾けて滲む。
 好きだ。
 知っている。

 そして、私だって──まだこんなに、律人が好きだ。

 だめだ。泣いてはだめ。生理的なものだと思ってもらえる以上の涙は許されない。私は必死に目を閉じて──律人の体温、この一年ずっと求め続けていたものに包まれて、そのまま、眠ってしまったようだった。
 

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