婚約者に「いらない」と言われた私が、愛され妻を演じることになりました
「不正とは?」
少し離れたところで話をしていた副社長も、事態に気づいてこちらへ戻ってきた。
「とぼけても無駄ですよ。うちに赴任していた医師を買収して、自社製品の導入を進めていたじゃありませんか」
「事実無根ですね」
挑発に乗らず淡々と返す凌也さんに、三峰院長は眉間にしわを寄せて苛立たしそうな顔を見せる。
「強がるのも、大概にしておいた方がいいですよ。あなたはまだ若いんだ。一度の失敗くらい、これから取り戻していける」
勝手に凌也さんを悪者に仕立て上げようとするこの人に、腹が立つ。
チラッと周囲を見回すと、困惑する人もいればあからさまに興味津々な人もいる。
少し離れたところに、ニヤニヤとしながらこちらを眺める鏑木さんも見つけた。
「へえ。三峰院長のお言葉を借りれば、歳をいってからの失敗は取り戻せないと?」
そう言ってすぐに、凌也さんは口が滑ったことを「失礼」と詫びる。ポーズにすぎないことは明白だ。
顔を引きつらせた面々を前に、彼はさらに続けた。
「長らく同じ企業ばかりを優遇し続け、院内をさらに良くしようと改革を目指す若手医師を排除する。甘い蜜を吸っていたのは、どちらなんでしょうね」
「な、なにを」
「本来は静かな場でお話しするつもりでしたが、あなたの方から仕掛けてきたのだから仕方がない。ああ、鏑木さん。あなたにも関わる話なので、逃げないでくださいね」
ほんの少しのやりとりで旗色が悪いと感じたのか、出口の方へ体を向けていた鏑木さんはギクリとして立ち止まった。
「おかしいと思っていたんですよ。三峰は何度営業をかけても、話を聞くどころか門前払いされる。現場の医師や事務方ではなく、院長自らね。まるで、実川メディカル以外の業者の介入は許さないとばかりに」
「あ、あなたの会社が、信用に当たらないからでは?」
苦し紛れにしか聞こえない返し、凌也さんが小さく笑う。
どこかから、最大手の本条を相手になにを言うのかという非難の声が聞こえてきた。
「回りくどい言い方は好かないので、単刀直入に言いましょう。あなたと実川社長、鏑木さんには、鏑木さんの父親の代からの癒着の疑いがある」
勢いをなくしつつあった院長が、ついに絶句する。
名指しされた三人は、そろって顔色を悪くした。
「実川社長から鏑木さんへは、企業献金のほかに個人名義の献金が定期的にされている。とある店の女性が、酔った実川社長の発言を教えてくれましたよ。あなたには臨時ボーナスが出ていたようですね。それもかなり多額の」
凌也さんが視線を向けると、父は必死で逃げ道を探るように視線を泳がせた。
少し離れたところで話をしていた副社長も、事態に気づいてこちらへ戻ってきた。
「とぼけても無駄ですよ。うちに赴任していた医師を買収して、自社製品の導入を進めていたじゃありませんか」
「事実無根ですね」
挑発に乗らず淡々と返す凌也さんに、三峰院長は眉間にしわを寄せて苛立たしそうな顔を見せる。
「強がるのも、大概にしておいた方がいいですよ。あなたはまだ若いんだ。一度の失敗くらい、これから取り戻していける」
勝手に凌也さんを悪者に仕立て上げようとするこの人に、腹が立つ。
チラッと周囲を見回すと、困惑する人もいればあからさまに興味津々な人もいる。
少し離れたところに、ニヤニヤとしながらこちらを眺める鏑木さんも見つけた。
「へえ。三峰院長のお言葉を借りれば、歳をいってからの失敗は取り戻せないと?」
そう言ってすぐに、凌也さんは口が滑ったことを「失礼」と詫びる。ポーズにすぎないことは明白だ。
顔を引きつらせた面々を前に、彼はさらに続けた。
「長らく同じ企業ばかりを優遇し続け、院内をさらに良くしようと改革を目指す若手医師を排除する。甘い蜜を吸っていたのは、どちらなんでしょうね」
「な、なにを」
「本来は静かな場でお話しするつもりでしたが、あなたの方から仕掛けてきたのだから仕方がない。ああ、鏑木さん。あなたにも関わる話なので、逃げないでくださいね」
ほんの少しのやりとりで旗色が悪いと感じたのか、出口の方へ体を向けていた鏑木さんはギクリとして立ち止まった。
「おかしいと思っていたんですよ。三峰は何度営業をかけても、話を聞くどころか門前払いされる。現場の医師や事務方ではなく、院長自らね。まるで、実川メディカル以外の業者の介入は許さないとばかりに」
「あ、あなたの会社が、信用に当たらないからでは?」
苦し紛れにしか聞こえない返し、凌也さんが小さく笑う。
どこかから、最大手の本条を相手になにを言うのかという非難の声が聞こえてきた。
「回りくどい言い方は好かないので、単刀直入に言いましょう。あなたと実川社長、鏑木さんには、鏑木さんの父親の代からの癒着の疑いがある」
勢いをなくしつつあった院長が、ついに絶句する。
名指しされた三人は、そろって顔色を悪くした。
「実川社長から鏑木さんへは、企業献金のほかに個人名義の献金が定期的にされている。とある店の女性が、酔った実川社長の発言を教えてくれましたよ。あなたには臨時ボーナスが出ていたようですね。それもかなり多額の」
凌也さんが視線を向けると、父は必死で逃げ道を探るように視線を泳がせた。