婚約者に「いらない」と言われた私が、愛され妻を演じることになりました
「元婚約者や凪の家族のことは、私も心配していたところよ。実家に戻されていたら、今頃こんな明るい顔はしていなかったもの」
驚きはおさまらないようでも、私にとって悪い状況ではないと感じ取ってくれたようだ。
「本条さんは一見厳しい人のようでいて、情に厚いところがあるというか。出会ったときから、いつも私を気遣ってくれて。俺が守ってやるとまで言ってくれたの」
真剣に考え込んではいるものの、美琴に彼を疑う様子はないように見える。
もう一度カップを手に取り、必死になりすぎて昂っていた気持ちを落ち着ける。
「……凪が今、幸せ?」
「もちろん」
彼女を安心させるように即答する。
それに、これは事実だ。私を縛りつける実家から離れ、笑顔で心を抉ってくる婚約者とも縁が切れた。
凌也さんは多忙の身なのに、慣れないところに連れて来られた私をいつも気遣ってくれる。
こんなに恵まれた環境にいて、不幸せなわけがない。
ふっと表情を緩めた美琴が、真っすぐに私を見てきた。
「それなら安心した」
どうやら認めてくれたようだと、肩から力が抜ける。
「ねえ、凪。今度、旦那様に会わせてよ」
「えっと、この後、迎えに来てくれる約束をしてるの」
美琴と会いたいという私を、凌也さんは快く送り出してくれた。彼は今日、休日だが仕事で外に出ている。その帰りに、ここへ寄ってくれる。
「じゃあ、挨拶をさせてね。それにしても、わざわざ来てくれるなんて凪は大切にされているね」
「っ……ついで、だよ」
美琴の冷やかす口調に、たじたじになる。
そこからは、凌也さんについて根掘り葉掘り聞かれた。
頬を熱くして言葉を詰まらせる私を、美琴が楽しそうに笑う。
なにも特別なことを話しているわけじゃない。私の作る料理を『美味しい』と言ってくれることや、仕事帰りに話題のスイーツを買ってきてくれるとあかしただけ。
それなのに、私がなにを話しても美琴は笑みを深めてうなずく。
「み、美琴の話はないの?」
「私はいいの。今は凪よ」
なんとか話の矛先を変えようとしても、取り合ってもらえず。
けれど誰かとこんなにたくさん話をするなんてずいぶん久しぶりで、嫌だとは思わない。
恥ずかしくてたまらない半面、いつも心配ばかりかけてきた美琴を笑顔にできてうれしく思う。
驚きはおさまらないようでも、私にとって悪い状況ではないと感じ取ってくれたようだ。
「本条さんは一見厳しい人のようでいて、情に厚いところがあるというか。出会ったときから、いつも私を気遣ってくれて。俺が守ってやるとまで言ってくれたの」
真剣に考え込んではいるものの、美琴に彼を疑う様子はないように見える。
もう一度カップを手に取り、必死になりすぎて昂っていた気持ちを落ち着ける。
「……凪が今、幸せ?」
「もちろん」
彼女を安心させるように即答する。
それに、これは事実だ。私を縛りつける実家から離れ、笑顔で心を抉ってくる婚約者とも縁が切れた。
凌也さんは多忙の身なのに、慣れないところに連れて来られた私をいつも気遣ってくれる。
こんなに恵まれた環境にいて、不幸せなわけがない。
ふっと表情を緩めた美琴が、真っすぐに私を見てきた。
「それなら安心した」
どうやら認めてくれたようだと、肩から力が抜ける。
「ねえ、凪。今度、旦那様に会わせてよ」
「えっと、この後、迎えに来てくれる約束をしてるの」
美琴と会いたいという私を、凌也さんは快く送り出してくれた。彼は今日、休日だが仕事で外に出ている。その帰りに、ここへ寄ってくれる。
「じゃあ、挨拶をさせてね。それにしても、わざわざ来てくれるなんて凪は大切にされているね」
「っ……ついで、だよ」
美琴の冷やかす口調に、たじたじになる。
そこからは、凌也さんについて根掘り葉掘り聞かれた。
頬を熱くして言葉を詰まらせる私を、美琴が楽しそうに笑う。
なにも特別なことを話しているわけじゃない。私の作る料理を『美味しい』と言ってくれることや、仕事帰りに話題のスイーツを買ってきてくれるとあかしただけ。
それなのに、私がなにを話しても美琴は笑みを深めてうなずく。
「み、美琴の話はないの?」
「私はいいの。今は凪よ」
なんとか話の矛先を変えようとしても、取り合ってもらえず。
けれど誰かとこんなにたくさん話をするなんてずいぶん久しぶりで、嫌だとは思わない。
恥ずかしくてたまらない半面、いつも心配ばかりかけてきた美琴を笑顔にできてうれしく思う。