婚約者に「いらない」と言われた私が、愛され妻を演じることになりました
 額に口づけられ、瞼を閉じる。それから頬に鼻に、いたるところにキスが降ってくる。

 私の背を支えていた大きな手が、頭から背中を何度も往復していく。私はすっかり余裕をなくし、彼の腕を掴みながらされるがままになった。

 お互いの唇が重なり、それから彼の舌が口内に入ってくる。羞恥心の驚きでいっぱいだったさっきとは違い、少しだけ自分からも舌を動かした。

 くすりと笑った凌也さんが、さらに深く口づけてくる。

 くちゅくちゅと唾液が混ざり合う音が、静かな室内にいやらしく響く。
 覚えたての深いキスに夢中になっている間に、服を脱がされていった。

 気づけば下着姿にされており、そっとベッドに押し倒された。
 視線を外さないまま、凌也さんがネクタイを外して近くの椅子に放る。その男性らしい、骨ばった手に目が釘づけになる。雑な仕草なのに、なぜか色気に溢れているように見えてしまう。

 ワイシャツのボタンをいくつか外しながら私に覆いかぶさり、顔中に口づけていく。
 耳もとに口づけて耳朶をはまれる、背中がゾクゾクとした。

 大きな手が、体のラインを何度もなでていく。鎖骨をなぞった彼の手は、下着の上からふくらみに添えられた。
 内側にそろりと手を差し込まれて、ビクッと体が揺れる。大丈夫だというように軽く口づけられ、その間に下着も外されてしまう。

 恥ずかしくて、とっさに胸もとを腕で覆う。

「綺麗だよ、凪。だから隠さないで」

 耳もとでささやかれて心は揺れるが、羞恥心が勝って首を横に振る。
 凌也さんは諦めてくれたのか、深い口づけを再開した。

 お互いの舌の表面を擦り合わせ、絡ませ合う。与えられる快感に、思考はだんだんぼやけていった。

 いつしか考えることを放棄して、気持ちいいことに没頭する。私がなにも考えられないでいる間に、胸もとの腕はどけられていた。

 大きな手が、直接膨らみを包み込む。やわやわと触れられている間も、口づけは止まらない。

「んん」

 胸の先端に触れられ、くぐもった声が漏れる。指ではじかれるたびに腰が浮き、下腹部がじんじんと疼く。まだ下着に隠されたままの秘所が、ジワリと潤んだのがわかって恥ずかしくなった。

 口づけから解放されると、どちらのものかわからない唾液が頬を伝う。
 乱れた呼吸が整う前に、今度は舌で胸もとを愛撫してきた。

「あっ……やぁ」

 先端を熱い口内に含まれ、舌で転がされる。急にもたらされた快楽に、たまらず胸もとにある凌也さんの頭をかき抱いた。
 頭の中が一瞬で真っ白になり、訳が分からない。
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