婚約者に「いらない」と言われた私が、愛され妻を演じることになりました
 そうこうしているうちに、彼の手が誰にも触れさせたことのない脚のつけ根に触れた。

 私が脚を閉じるより先に、凌也さんが体を割り込ませてしまう。
 すっかり潤んでいたそこに下着の上から触れられて、体が大きく跳ねた。

「大丈夫だ、凪」

 瞬時に体を強張らせると、頬に手を添えてぺろりと唇を舐められた。

 絶えず漏れ出る嬌声は、深い口づけにのみ込まれていく。
 下着の中にもぐり込んだ彼の指が、私の体の中にそっと入ってくる。

「痛くない?」

 彼にしがみつきながら、小さくうなずく。

 私の反応を確かめながら、指の動きは次第に大胆になっていた。
 気持ちのいい場所を続けざまに刺激されて、ますます潤みが増す。
 瞼をきつく閉じて、初めて与えられた快楽にたまらず体をくねらせた。

 高まる熱をなんとか逃したいのに、体の疼きはますます大きくなる。
 閉じた瞼の裏が白く染まり、触れられているところからなにかがせり上がってくるようだ。

「あっ」

 凌也さんにしがみついていた指先に、ぐっと力がこもる。

 なにかが来ると思った次の瞬間。


「ああ……」

 ひと際大きな嬌声を上げながら、体をのけ反らせた。

 静まり返った室内に、私の荒い呼吸が響く。
 凌也さんに抱きしめられながら、なにが起こったのかわからず呆然としていた。

 しばらくして、彼が顔を起こして私を覗き込む。

「大丈夫か?」

 目を合わせてうなずき返すと、頬に口づけた彼は体を起こした。
 離れていく熱に追い縋りたくなる。

 せめて視線だけで彼を追うと、ベッドの脇で彼が服を脱ぐ姿が目に入った。
 私が凝視していたせいで、すぐに気づかれてしまう。

 ハッとして目を逸らしたが、見ていたことはバレバレだったのだろう。凌也さんがくすくすと笑った。

「なんだ。凪ならいくらでも見ていいのに」

 程よく鍛えられた上半身は、一瞬見えただけでも綺麗だと思った。

「ほら、凪」

 彼の手に促されて、顔を向ける。途端に振ってきた優しい口づけに、思わず表情が綻んだ。

 けれど彼が私の脚に手をかけると、瞬時に体が強張ってしまう。

「できる限り優しくする」

 凌也さんは絶対にひどいことはしないとわかっている。頭ではう理解しているのに、極度に緊張してなかなか力が抜けない。

「凪」

 性行為が初めての女なんて、きっと面倒に違いない。そう不安になりかけていたそのとき。彼が甘やかすような口調で私を呼ぶから、いつの間に閉じていた瞼をそっと開けた。
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